平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第31号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃よりひとかたならぬご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
令和6年能登半島地震では、中部協議会の会員企業の皆様や関係者の方々の中にも地震の影響を受けた方がいらっしゃると聞き、ご苦労はいかばかりかと拝察いたします。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、復興に向けてご尽力されている方々に深く敬意を表します。
そうした困難もありながら、一方ではコロナ禍以前の日常が戻り、ようやくポストコロナ時代の展望について語ることができるときを迎えました。先日閉幕した「パリ2024オリンピック・パラリンピック」では競技場に観客が詰めかけ、本来の熱気に包まれた大会となりました。日本選手団はオリンピックで過去最高となる45個のメダルを、パラリンピックでは前回の東京大会を超える14個の金メダルを獲得し、アスリートの活躍に勇気づけられた方も多いのではないのでしょうか。
近年の日本の労働市場では、人口減少と少子高齢化の加速、働き方改革の進展、コロナ禍を経ての働き方の変容、DXの重要性の高まり、そして生成AIの急速な進化といった、これまでになく大きく激しい変化が数多く起こっており、ひとつの変革期を迎えていると言っていいでしょう。
特に、人口減少と少子高齢化の加速、また、それにともなう労働力人口の減少は、我が国においてもっとも大きな課題のひとつであると同時に、もっとも解決が難しい課題のひとつでもあります。メディアで「人手不足」という言葉を目にしない日はないほどであり、多くの企業が事業に必要な人材の獲得や定着を実現するため模索しています。
一方、働き手である派遣社員側に目を向けると、テクノロジーの進展も相まって、スキルの需給ギャップが大きな課題となっています。現在、およそ8割の派遣社員が事務職として勤務していますが、三菱総研の試算によると、国内の労働需給バランスは2030年に事務系の人材が120万人過剰となるのに対し、デジタルをはじめとする専門職の人材は170万人不足すると見られています。
このような状況において、我々人材派遣業界では、派遣社員のリスキリングと、成長分野への人材の労働移動をさらに強化する必要があると考えています。リスキリングによって派遣社員の能力開発を支援し、デジタルをはじめとする成長分野での仕事をマッチングすることで、キャリア形成と企業の業績向上につなげることは、我々だからこそ実現可能なサイクルです。雇用・労働市場における課題解決を推進するだけでなく、日本全体の持続的な成長にも寄与することができます。
人材のプロフェッショナルである我々は、企業が持続的な成長を果たすとともに、働く人々が自身の将来に対する展望を持ち、幸せを感じながらいきいきと働くことができる社会を構築することを目指しています。
一般社団法人日本人材派遣協会は、あらゆるステークホルダーの皆様と協力・連携しながら、この目標の実現に向かって、一丸となって取り組んでまいります。
私も人材派遣協会の会長として、中部地域協議会の皆様と力を合わせながら、派遣社員のみならず会員各社の従業員の方々をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の動向等について
愛知労働局需給調整事業部 部長 山下 保氏
全文を読む
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方におかれましては、愛知労働局の業務運営、とりわけ労働者派遣事業の適正な事業運営に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
愛知の労働行政を取り巻く情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、有効求人倍率は令和2年9月に1.02倍まで低下しましたが、令和3年以降は、基幹産業である製造業を中心に生産回復の動きがみられ、直近の令和6年7月では1.26倍まで回復するなど、経済活動が本格的に動き始めています。
社会全体のマインドも従業員の雇用維持から、人材育成やリスキリングによるスキルアップといった「人への投資」に向かう流れに変化してきており、構造的な賃上げの実現と人材活性化に向けた労働市場の強化を目指す必要があります。
このような情勢の中、愛知労働局では重点課題として、「最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援、非正規雇用労働者の処遇改善」、「リスキリング、労働移動の円滑化等の推進」及び「多様な人材の活躍と魅力ある職場づくり・就職支援」に取り組んでおります。引き続き業務運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて、愛知労働局における労働者派遣事業の指導監督状況ですが、令和5年度は、前年度比2.1%増加の1,485事業所について指導監督を実施し、そのうち文書指導を行った事業所数は前年度比1.3%増加の1,051事業所でした。なお、指導監督を実施した事業所の内訳は、派遣元事業所が1,197事業所、派遣先事業所が267事業所です。派遣先事業所については、実際に派遣労働者が就業する現場であり、法令の周知徹底と適正な派遣就業を確保する必要がありますので、年度当初から重点的に実施しました。
派遣元事業所に対する主な指導事項は「労使協定の締結(労働者派遣法第30条の4第1項)」、「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供がない場合の派遣契約締結の禁止(労働者派遣法第26条第9項)」、「就業条件等の明示(労働者派遣法第34条第1項)」、「派遣元管理台帳(労働者派法第37条第1項)」などです。
派遣先事業所に対する主な指導事項は「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供(労働者派遣法第26条第7項)」、「派遣先管理台帳(派遣労働者の就業状況の記録)(労働者派遣法第42条)」、「抵触日の通知(労働者派遣法第26条第4項)」などです。
皆様におかれましては、厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業の専門家として、派遣先事業所への適切なアドバイスをお願いいたします。
令和6年度の指導監督方針は、令和2年4月1日施行の派遣労働者の待遇改善(いわゆる同一労働同一賃金)について、同一労働同一賃金の遵守を一層徹底するため、労働基準監督署と連携し適切な制度運用がされるよう重点的に指導監督を実施します。
また、申告や情報提供等により把握した禁止業務への派遣、無許可派遣、いわゆる偽装請負等の違法事案については迅速に調査を行い、厳正な指導監督を実施します。悪質な法違反や、繰り返しの法違反、故意性が疑われる法違反等については、行政指導に留めることなく、行政処分や告発等を視野に入れた対応をしていきます。
労働者派遣契約の中途解除や不更新といった事案が発生した場合、適正な雇用安定措置の履行に向け取り組んでまいります。
会員企業の皆様方の中にも有料職業紹介事業の許可を取得している事業者が多数いらっしゃると思いますが、令和6年4月1日施行の改正職業安定法施行規則により、求職者等に明示する労働条件内容が追加されたこと等、職業紹介事業に係る制度についてあらゆる機会を捉えて周知徹底を図って参ります。
また、医療・介護等職業紹介事業者に対する求人者からの就職者の短期離職及び手数料に関するトラブル等の苦情相談については、令和5年2月から「医療・介護・保育求人者向け特別相談窓口」を設置しており、丁寧な相談対応に務めるとともに、法違反が疑われる事案を把握した場合は、速やかに指導監督を実施して参ります。
最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆様方には、労働者派遣法や関係法令を十分にご承知いただき、引き続き労働者派遣事業の適正な運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
成長分野へ労働移動を促進することへの我々の役割
中部地域協議会 会長 志村 聡子氏
全文を読む
先般、日本人材派遣協会・中部地域協議会定時総会において、あらたに会長職を拝命いたしました志村聡子でございます。日頃は中部地域協議会の運営にご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
2024年も早いもので9月を迎えました。この4月以降は労働条件通知書の明示事項の追加や、特定業種での時間外労働の上限規制適用拡大、障がい者法定雇用率引き上げ、社会保険の適用拡大等、労働環境の透明性と安全性のより一層の強化、また多様な働き方を支援する制度整備への対応にご尽力されてきたことと思います。また、昨今の物価上昇に伴う賃金引き上げの要請に応じるため、派遣料金の適正化を進め、派遣社員の労働条件を守るために様々なご苦労があったかと存じます。中部地域協議会の会員企業の皆さまが、派遣社員の雇用維持と安全確保、待遇改善に向けて日々ご尽力いただいていることに、心より感謝申し上げます。
労働市場の改革が本格的に進められており、ご承知の通り「三位一体の労働市場改革」がその中心に位置しています。「リ・スキリングによる能力向上支援」「職務給の導入」「労働移動の円滑化」の3つの柱は、まさに私たち派遣業界が従前より進めている施策と一致するものです。今後も派遣社員が自らのキャリアを選択し、成長できる環境を整えることが求められていると感じます。
今年度に入り、東海地方の有効求人倍率は緩やかな下降傾向にあるものの、7月の就業地別有効求人倍率は1.31倍と全国平均1.24倍を上回っています。有効求職者は毎月10万人前後いらっしゃるものの、引き続き人手不足感は否めない状況です。職種別では建設業や介護、IT分野などの専門職の求人倍率が高く、逆に事務職の求人倍率は0.44倍と人気が集中していることが伺えます。求職者の希望と市場需要のミスマッチは解消されておらず、バランスの取れた労働力の供給が課題となっています。
私たち中部地域協議会では、こうした法改正や労働市場の変化に対応するため、引き続き、会員企業の皆さまが必要な情報を提供し、研修や講習を通じて支援してまいります。具体的には、愛知労働局さまとの連携による「コンプライアンス研修」、日本人材派遣協会と共に実施する「派遣元責任者講習」、さらには有識者を招いた「会員研修会」など、さまざまな研修やイベントを開催いたします。これらの取り組みを通じて、会員企業のレベルアップと業界全体の発展を目指しています。また、会員間のコミュニケーションを深めるための「懇親会」や「ゴルフコンペ」なども実施し、地域に密着した情報交換の場を提供してまいります。
また、日本人材派遣協会との連携を密にし、中部地域の現状と会員各社さまの要望を伝える活動も引き続き行ってまいります。
協議会未加入の会社におかれましては、加入の検討をお願いするとともに、一人でも多くの方に各種イベントに参加いただきたいと考えております。
今後も、派遣社員のキャリア形成を支援し、IT・デジタルなどの成長分野への労働移動を促進することが、私たちの重要な役割であると考えています。会員企業同士の連携を強化し、業界全体の健全な発展を目指し、地域社会に貢献できるよう取り組んでまいります。
皆さまの引き続きのご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。
人材派遣業における最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、当協会の会員企業だけでなく、どなたでもご利用いただける「相談センター」を設置し、労働者派遣法をはじめとする派遣に関するさまざまなご相談に対応しています。2023年度の相談件数は4,518件であり、前年度とほぼ同様の件数となりました(別表参照)。2020年度から始まった新型コロナウイルス蔓延の影響により、電話相談を一定期間Web相談のみの体制にせざるを得なかったため、2021年は2019年の相談件数の半数まで減少しましたが、現在は回復傾向となっています。
対象 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 1,747 | 1,064 | 787 | 1,411 | 1,511 |
派遣会社 | 4,247 | 2,579 | 2,305 | 2,833 | 2,772 |
派遣先企業 | 297 | 159 | 98 | 156 | 137 |
その他 | 743 | 445 | 170 | 121 | 98 |
合計 | 7,034 | 4,247 | 3,360 | 4,521 | 4,518 |
派遣社員からの相談
【休業手当に関する相談】
派遣社員から「休業手当」に関する相談が多く寄せられます。
特に多いのは、派遣先で急に派遣契約期間が短縮され、自宅待機を命じられた際の賃金の支給に関するものです。
派遣先の都合で派遣契約期間が短縮される場合、まず、派遣先は派遣元に対して、短縮理由を十分に説明し派遣元の合意を得る事が必要です。次に、派遣先は派遣社員に対して、新たな就業機会を提供するため関連会社への斡旋などに努めることが求められます。一方、派遣元は労働契約期間が満了するまでに派遣社員に新たな派遣先を紹介することが基本となりますが、新たな派遣先を紹介できない場合には、労働契約期間が終了するまでの間、派遣元は派遣社員に休業手当を支払う義務があります。このような場合は、派遣元は派遣先に対して、契約期間の短縮に伴う損害賠償を請求することができます。
また、「派遣先の創立記念日」や「特別休暇」「計画年休」等により就業できない場合や、「派遣先の夏季休暇」が派遣社員には知らされていなかった場合等、派遣社員が就業可能にもかかわらず、休日とさせられるケースも見受けられ、その時に有給休暇の取得を強制されたことについての不満や、その場合に休業手当が支払われるかどうかという相談も多く寄せられます。
派遣先の休日の問題は、派遣契約の締結・更新時に派遣先の休日や休暇に関する情報を確実に把握し、派遣契約書、就業条件明示書に就業する日(具体的な曜日または日)を明確に記載すること、また、派遣社員にしっかりと伝えることがトラブルの未然防止につながりますので、後まわしにせずに取り組むことをおすすめします。
なお、休業手当については、賃金の6割が支給されると考えている派遣社員が多く見受けられます。
実際には休業手当は、平均賃金(原則:平均賃金 = 算定事由発生日(賃金締切日がある場合は、直前の締切日)以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)))の6割となります(労基法第26条、労基法第12条)。そのため、派遣社員が考えている金額よりも少なくなることがほとんどであるため、派遣社員からは違法でないかとの問い合わせもあります。この点についても派遣社員に十分にご説明ください。
※なお、就業規則等により6割を超える休業手当、例えば満額支払い等を定めることは問題ありません。
※賃金が日給制、時給制等の場合、労働者が不利にならないよう平均賃金ではなく最低保障額で支払う場合があります。
派遣元からの相談
【期間制限・個人単位の抵触日】
個人(組織)単位の期間制限の抵触日を迎える派遣社員が他の派遣元から移籍してきて、当社から同じ派遣先の同一の組織単位に派遣した場合、抵触日の起算日はリセットされるのかという相談が多く寄せられます。しかし、個人(組織)単位の派遣期間制限では、同一の派遣社員が同一の組織単位で働ける期間は3年間までと定められており、派遣元が変更されてもこれまでの抵触日は引き継がれるため、リセットされません。
なお、派遣元で無期雇用の場合は期間制限の例外となるため、有期雇用から無期雇用に転換することで同一の組織単位での派遣を継続することが可能です。ただし、派遣先が主導して派遣元の変更を行うと、派遣社員の特定を目的とする行為と見なされる恐れがあるため、この場合も注意が必要です。
【期間制限・事業所単位の抵触日】
2024年は期間制限の改正法施行から3年のサイクルに当たる年のため、期間制限に関する相談が多く寄せられます。
その中で、派遣先で行う事業所単位の期間制限の延長手続き(意見聴取)の完了を待たずに、抵触日を超えて派遣契約を締結できるかという相談も見受けられます。
その場合、万が一、派遣先が抵触日の延長を行わなかった場合のリスクを考慮すると、安全策として抵触日の前日までの派遣契約にする方が賢明です。例えば、事業所単位の抵触日が10月1日の場合、抵触日の延長が確定していなければ、実質的に派遣できるのは9月30日までとなります。したがって、まず9月30日までの派遣契約を締結し、意見聴取手続きが完了し、新たな抵触日の通知を確認してから、10月1日以降の派遣契約を結ぶことが適切です。
派遣先からの相談
【直接雇用に関する紹介料の取り扱い】
派遣先が受け入れていた派遣社員を直接雇用することになった場合の紹介手数料の支払いの取扱いについての相談が寄せられます。一般的には、派遣契約書に紛争防止措置として、派遣終了後に派遣先が派遣社員を直接雇用する場合には、紹介手数料を支払う旨を規定しているケースが多いので、自社の派遣契約の記載内容を今一度ご確認ください。なお、派遣元が紹介手数料を請求する場合は、有料職業紹介事業の許可が必要となります。
なお、日本人材派遣協会・会員サイトでは、相談センターに寄せられる相談事例をベースに、会員企業の皆様(特に営業担当の皆様)が知っておくべき内容を1-2分の動画にてご紹介しています。また、派遣法をはじめとした法解説のページ、法改正解説動画も充実しておりますので是非ともご覧ください。
URL https://www.jassa.or.jp/member/
ご不明な点がございましたら、相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~18:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
お問合せフォーム
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第30号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃よりひとかたならぬご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
2020年に新型コロナウイルス感染症が本格的に拡大して以降、人材派遣業界を含む日本の経済界、そして社会全体で様々な苦労がありましたが、現在は社会経済活動が以前にも増して活性化する兆し見せております。今年は各地で4年ぶりに祭事や花火大会といったイベントが開催されるなど、コロナ禍以前の日常が戻ってきたことを肌で感じることができるようになってきました。一方、コロナが再び流行し始めているという報道もあるため、今後も決して気を緩めることなく、必要な対策を講じながらも、前を向いてポストコロナ時代における展望について語るべきときが来ている考えております。
さて、我が国の雇用・労働市場において特に大きな課題の一つが、人口減少と少子高齢化の加速です。政府の推計では、2050年までに人口が2,000万人減少し、全人口における65歳以上の高齢者の割合が4割に迫ると見込まれています。労働力人口が大幅に減少するなかで、持続的な成長を遂げるために不可欠なのが、生産性の飛躍的な向上です。そのためのカギとなるのが、教育研修機会の提供やキャリア形成支援によって、働く人々の潜在的な能力を引き出すことです。そのためには、働く人々が自身の将来に対する展望を持ち、必要な能力を開発し、幸せを感じながらいきいきと働くことができる環境を創り上げることが不可欠です。
これからの日本の雇用・労働市場において、特に重要になると考えられるのがリスキリングです。現在の労働市場では、事務職が全体の約20%を占めており、1,400万人を超える方が事務職に従事しています。一方、デジタル人材は慢性的に不足しており、DXの推進によって需要はさらに増加しています。三菱総研の調査によると、2030年には事務職が120万人過剰になり、反対に専門職は170万人不足すると見込まれています。このミスマッチを解消するための解決策が、リスキリングによるデジタル人材の育成です。人材のプロフェッショナルである我々は、働く人々が将来への展望を描くことを支援するキャリアコンサルティングや多様な働き方および就業機会の提供だけでなく、リスキリングによる成長産業への労働移行を担っていく必要があります。それによって人の可能性を高め、多くの人々が幸せを感じながらいきいきと働ける社会を実現することができます。
私も人材派遣協会の会長として、中部地域協議会の皆様と力を合わせながら、派遣社員のみならず会員各社の従業員の方々をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の動向等について
愛知労働局需給調整事業部 部長 山下 保氏
全文を読む
令和5年4月1日付けで、愛知労働局需給調整事業部長を拝命しました山下でございます。
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方には、愛知労働局の業務運営、とりわけ労働者派遣事業の適正な事業運営にご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、最近の愛知労働局管内の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響により、有効求人倍率は令和2年9月に1.02倍まで低下しましたが、令和2年12月以降、緩やかではありますが上昇し、令和5年7月の有効求人倍率は1.37倍と持ち直しの動きが広がりつつあります。しかしながら、一部の産業において改善の動きが弱まっており、引き続き注意する必要があると判断しているところです。
労働力人口の減少、人手不足の状況が続く中、労働者派遣事業並びに職業紹介事業の需要は今後も高まるものと想定されます。
令和4年度の愛知労働局における労働者派遣事業の指導監督状況ですが、1,454事業所(前年度比4.8%増加)について指導監督を実施し、文書指導を行った事業所数は1,038事業所(前年度比8.4%増加)でした。指導監督を実施した事業所の内訳は、派遣元事業所が1,211事業所(前年度比3.6%増加)、派遣先事業所が195事業所(前年度比97.0%増加)です。派遣先事業所については、実際に派遣労働者が就業する現場であり、法令の周知徹底と適正な派遣就業を確保する必要がありますので、年度当初から重点的に実施しました。
派遣先事業所に対する主な指導事項は「派遣先管理台帳の未作成、派遣労働者の就業状況に係る通知が適切に行われていない」、「派遣元に対し、あらかじめ、比較対象労働者の待遇等の情報を提供していない」などです。
派遣元事業所に対する主な指導事項は「労使協定に定めるべき事項を適正に定めていない」、「派遣先から比較対象労働者の待遇等の情報提供を受けずに労働者派遣契約を締結している」、「就業条件等の明示を行っていない」、「派遣元管理台帳が未作成」などです。
皆様方におかれましては、厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業の専門家として、派遣先事業所への適切なアドバイスをお願いいたします。
なお、令和4年度に指導監督を実施した中で、不備が多かった項目を中心に、「労働者派遣事業の適正化に向けたオンライン研修会」を11月17日にYouTubeを利用したライブ配信で開催を予定していますので是非参加、視聴をお願いします。
令和5年度の指導監督方針は、令和2年4月1日施行の派遣労働者の待遇改善(同一労働同一賃金)について、令和4年度の指導監督の結果を見ても、まだ制度の理解が十分とはいえず、同一労働同一賃金の遵守を一層徹底するため、労働基準監督署と連携し適切な制度運用がされるよう重点的に指導監督を実施します。
また、申告や情報提供等により把握した禁止業務への派遣、無許可派遣、いわゆる偽装請負等の違法事案については迅速に調査を行い、厳正な指導監督を実施します。悪質な法違反や、繰り返しの法違反、故意性が疑われる法違反等については、行政指導に留めることなく、行政処分や告発等を視野に入れた対応をしていきます。
さらに、労働者派遣契約の中途解除や不更新といった事案が発生した場合、適正な雇用安定措置の履行に向け取り組んでいきます。
また、会員企業の皆様方の中にも有料職業紹介事業の許可を取得している事業者が多数いらっしゃると思いますが、令和5年6月16日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(いわゆる骨太方針)において、医療・介護・保育分野における職業紹介について、有料職業紹介事業の適正化に向けた指導監督や事例周知を行うことになりました。「悪質な職業紹介事業者の排除」について集中指導監督に取り組み、転職勧奨やお祝い金規制に係る違反等については、厳正な指導監督を実施します。
最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆様方におかれましては、労働者派遣法並びに関係法令を十分にご承知いただき、派遣先事業所への適切な対応や派遣労働者には教育訓練・キャリアコンサルティングなどを通じて、派遣先、派遣労働者から信頼される派遣事業所を目指していただき、引き続き適正な事業運営に努めていただきますようお願い申し上げます。
成長分野へ労働移動を促進することへの我々の役割
中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏
全文を読む
中部地域協議会は、主に中部圏8県に事務所を持つ派遣会社で構成され、2023年度の会員企業は84社でございます。各種関係機関・団体との情報交換や会員企業同士の交流、会員企業の社員向け研修などを通じて、派遣事業の健全な発展に寄与することを目的として運営しております。
2020年以来猛威を振るってきたコロナ禍も、この23年5月「5類」への移行に伴い、本格的に社会経済活動が再開されています。久しぶりに飲食店も賑わい、観光地では外国人の姿が多くみられます。一方で、一部の業種では、事業再開に伴う人手不足が深刻となっております。
これを裏付けるデータとして、この5月時点の中部経済連合会の調査では、景況判断は3期連続で改善され、また経営上課題については、「人手不足」が最も多く、特に非製造業では深刻となっております。
また、コロナ禍を機に働き方も変容し、派遣社員に求められるスキルも今まで以上に変化し、対応を求められております。派遣業界としても、お客様のニーズに素早く応えていくことが何よりも重要と考えております。
さて政府は、骨太の方針2023年において、三位一体の労働市場改革を行うとされています。
その内容は、 「一人一人が自らのキャリアを選択する時代となってきた中、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自らの意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要であり、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、労働者が自らの選択によって労働移動できるようにすることが急務である。」としています。
そして、キーワードは「リスキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」となっています。
これは、まさに現在、我々派遣業界が実践し推進していることではないかと考えております。今後は「キャリアコンサルティング」「リスキリング」「マッチング」を一貫して支援するサービスをさらに充実させて、IT・デジタルなど成長分野への労働移動を促進することへの貢献が我々の役割と考えております。
そして、労働市場に参加しやすい環境を整えていくことも益々期待され、改正にあわせた対応に取り組むことで、こうした環境変化に素早く順応していく業界であると思います。
一方で、地域における派遣会社だけでは情報の浸透が困難な側面もございます。
協会サービスの利用促進や、地域ならではの情報を共有することで、会員企業のレベルアップを図り、業界全体が社会から評価いただけるよう誠実に取り組んでいくことで地域の活性化にお役に立てるよう努めてまいります。
中部地域協議会では、愛知労働局 需給調整事業部の方をお招きしての「コンプライアンス研修」、日本人材派遣協会とともに「派遣元責任者講習」の運営、また有識者にご登壇いただき、将来どういう世界になるか、何が必要になるか語っていただく「会員研修会」、また会員相互のコミュニケーションを図る「会員懇親会」や「ゴルフコンペ」など、さまざまなイベントを企画実施しております。
協議会未加入の会社におかれましては、加入の検討をお願いするとともに、オンラインなども活用することで一人でも多くの方に各種イベントに参加いただきたいと考えております。
最後に、日本人材派遣協会との連携を密にしながら、派遣社員の「キャリア形成支援」を一層進め、また行政当局との対話を続け「コンプライアンス遵守」を推進し、公正な待遇の確保や個別事案対応力強化を図り、業界の健全な発展に尽力し地域に貢献できるよう取り組んでまいります。
引き続き倍旧のご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
人材派遣業における最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関するご相談にお応えする「相談センター」を設置しています。相談センターは、当協会の会員様はもちろん、どなたでもご利用することができます。2022年度の相談件数は4,521件となりました(別表参照)。
2020年度からは、コロナ禍で相談センターの体制を一時期Web相談のみとさせていただいたこともあり、相談件数が減少しましたが、2022年度からは徐々に相談件数は増加しています。
対象 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 1,790 | 1,747 | 1,064 | 787 | 1,411 |
派遣会社 | 4,323 | 4,247 | 2,579 | 2,305 | 2,833 |
派遣先企業 | 363 | 297 | 159 | 98 | 156 |
その他 | 660 | 743 | 445 | 170 | 121 |
合計 | 7,136 | 7,034 | 4,247 | 3,360 | 4,521 |
派遣社員からの相談
【労働条件の相違】
労働条件の相違は、一年を通じて、派遣社員から多く寄せられる相談です。
「職場見学で説明された部署ではなく、業務内容も違うまま派遣就業の開始となったため、その場で派遣先責任者及びその部署の上司に相談したが、『職場見学で説明した部署と業務ではなくこちらでお願いします。』と言われた。派遣先が勝手に契約内容と異なる就業場所や業務内容に変更できるのか?」
派遣先が一方的に契約内容と異なる就業場所や業務内容に変更して、派遣社員に命じることはできません。
労働者派遣の場合、予め派遣元と派遣先との間で就業する部署や仕事内容等を確認したうえで、派遣契約を締結し、その内容をもとに派遣社員が就業することになるからです。また、派遣元は、派遣契約とは別に派遣社員と労働契約を締結しており、その内容のとおり就業することになります。
このような場合には、まず派遣元は、派遣先に経緯・理由等を確認し、派遣契約のとおりとなるよう求めなければなりません。それでも是正されなければ、派遣社員を保護するために、派遣元は派遣先に対して派遣契約を解除することができ (民法541条) 、派遣元は派遣先に対して損害賠償を請求することができます(民法415条)。
仮に是正がなされず、派遣契約を中途解除することになったとしても、派遣元と派遣社員との労働契約は存続しますので、派遣社員の新たな就業機会の確保、休業手当の支払い等の対応が必要です。
話し合いの上、契約内容を変更するのであれば、派遣元と派遣先は派遣契約、派遣元と派遣社員は労働契約をそれぞれ合意の上、変更する必要があります。
派遣元からの相談
60歳を迎える派遣社員についての相談も増えてきております。
【60歳を迎える派遣社員】
「個人単位の期間制限の3年を経過する前に派遣社員が60歳を迎えた場合、期間制限の例外要件に該当し、事業所単位の期間制限が延長していることから、その派遣社員は3年を超えて派遣就業が可能となった。派遣社員も継続して就業の希望があったが、派遣先から『3年到達時に、60歳になった派遣社員を交代してほしい』との要請があった。どのように対応したらよいか?」
派遣先が60歳という年齢を理由に、派遣社員を特定することはできません。
派遣法では、派遣先が年齢や性別に限定するなど派遣社員を特定することを目的とする行為が禁止されております。
派遣社員のスキル不足、勤怠不良、協調性がないなど確かな事実があって、何度是正しても改善されないのであれば変更は可能となりますが、年齢だけでは認められません。
このような場合は、派遣元は派遣社員の雇用の安定のために、派遣先と十分に話し合いをすることが重要です。なお、例えば派遣元と派遣社員の労働契約が継続しているにもかかわらず、派遣社員が就業できない場合は、新たな就業先を確保すること又は休業手当の責任が生じますので、注意が必要です。
【60歳を迎える無期雇用派遣社員】
「まもなく60歳に到達し定年を迎える無期雇用派遣社員に、就業先を紹介できずに休業手当を支給している。当社の規程では定年の時点で有期雇用に転換となり紹介できない場合の休業手当が対象外となるがいいか?いつまで雇用を継続する必要があるか?」
定年後の有期雇用派遣社員にも就業先を紹介できなければ休業手当が発生するため、対象外にすることはできません。
また、定年後の雇用について、高年齢者雇用安定法で義務化されている「65歳までの雇用確保措置」により、定年を60歳としている企業は、継続希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度を設ける義務があります。本人が引き続き就業を希望すれば、雇用は継続となり、その際に仕事がなければ休業手当の対象となります。
なお、定年後の有期雇用契約の高齢者には、5年の無期転換ルールを適用しない特例が設けられています(都道府県労働局長の認定が必要)。また、法改正により現在は「70歳までの就業確保措置」が努力義務になっています。
派遣先からの相談
【職場見学時の質問】
「派遣元から紹介される人物にミスマッチが多いので、職場見学時に派遣先から派遣社員に質問して本人を見極めたいが可能か?」
職場見学は派遣社員が派遣先を訪問して、自ら業務内容や就業環境を確認する場であって、派遣先が派遣社員を見極め、選定するための場ではありません。
前述の年齢の特定と同様に、派遣先が派遣社員を事前面接等で選定する行為は、派遣社員を特定することを目的とする行為に該当し禁止されております。
ミスマッチを防ぐためには、派遣先は、派遣元との契約交渉の場で、具体的にどのような派遣社員を派遣してほしいのかをできる限り詳細に派遣元に伝え、すり合わせする必要があります。また、職場見学時の質問は、必要な業務能力を明確に説明した上で、それに該当するか否かを確認する目的の範囲内であって、派遣業務に関わる派遣社員の業務経験、知識、技術等に限られます。プライバシーや個人情報に関わる事項については、質問できません。
なお、就業後のトラブルを防ぐためにも特に業務内容については具体的に詳しく契約書に記載することをお勧めします。
何かご不明な点がございましたら、相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~19:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
お問合せフォーム
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第29号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の拡大によって、現在まで2年以上にわたり、我々はコロナ禍と呼ばれる期間を過ごしてまいりました。昨年2021年は、地域によっては年間の7割以上が緊急事態宣言下もしくはまん延防止等重点措置期間という、未曽有の事態となりました。この2年間は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止しながら、社会経済活動をできる限り停滞させることなく継続することが、我が国全体におけるもっとも大きな課題のひとつでした。我々人材派遣業界でも、派遣社員の安定的な雇用を実現しながら、新たな雇用機会の創出に貢献するべく、様々な取り組みを行ってまいりました。
我が国において特に大きな課題の一つが、人口減少と少子高齢化の加速です。政府の推計では、2050年までに人口が2,000万人減少し、65歳以上の高齢者の割合が4割に迫ると見込まれています。労働力人口が大幅に減少するなかで、持続的な成長を遂げるために不可欠なのが、生産性の飛躍的な向上です。そのためのカギとなるのが、教育訓練やキャリア形成支援により人々の潜在的な能力を引き出すことであると考えています。働く人々が自身の将来に対する展望を持ち、必要な能力開発を促進し、幸せを感じながらいきいきと働く環境を創り上げることが欠かせません。当協会としましては、安定的な雇用の実現と合わせ、一人ひとりがより幸せを感じ活躍できる社会の実現に貢献できるよう、全力を尽くしてまいります。
「経済財政運営と改革の基本方針2022」(骨太の方針)でも人への投資を重点投資分野のひとつとして掲げられるなか、大きなキーワードとなるのがリスキリングと人的資本経営です。人材のプロフェッショナルである我々は、働く人々が将来への展望を描くことを支援するキャリアコンサルティングや、ITなどの成長産業への労働移行を促すためのキャリア形成支援、そして、多様な働き方の選択肢と就業機会の提供といった取り組みを通じて、多くの人々が幸せを感じながらいきいきと働ける環境の構築に大きな役割を果たすことができる存在です。
中部地域協議会会員の皆様と協力・連携しながら、派遣社員はもとより各社の従業員をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の適正な運営に向けて
愛知労働局需給調整事業部 部長 山﨑 孝義氏
全文を読む
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆さま方には、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の収束が見えない中、この間、愛知労働局需給調整事業部では、派遣労働者の雇用維持要請を複数回に渡り行って参りました。中部地域協議会の会員企業の皆さま方をはじめ、派遣元事業主の皆さまにおかれましては、必要な雇用安定措置への適切な対応や雇用調整助成金等を活用した雇用維持にご尽力いただき感謝申し上げます。
さて、最近の愛知労働局管内の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、令和2年12月には有効求人倍率が1.02倍と1倍を切る寸前まで低下しました。その後、徐々に上昇し、この7月には1.37倍まで改善し、持ち直しの動きが広がりつつありますが、一層注意する必要があると判断しているところです。
この状況は、企業からみれば必要な人材が集まらない、特に中小企業は厳しい状況にあり、皆さまもご苦労されていることと思います。愛知労働局ではコロナ禍のもと雇用の確保・維持を重点対策の一つとして取り組んできましたが、新型コロナウイルス感染症の存在を前提とした社会が継続し、再び人手不足が進む中、今年度は人材確保・人材育成対策を重点に取り組んでまいります。
次に令和3年度の労働者派遣事業に係る指導監督状況ですが、実施事業所数は1,387事業所でコロナによる訪問指導の制限も緩和され対前年度比20.7%増となりました。指導監督を行った事業所のうち、文書指導を行った事業所数は958事業所で対前年度比83.9%増でした。主な指導事例は「労使協定に必要な記載事項が記載されていない」、「就業条件の明示を行っていない、法定項目の記載がされていない」、「派遣元管理台帳の不備」となっています。
本年度の指導監督方針ですが、新型コロナウイルス感染症の影響等による労働者派遣契約の中途解除や不更新があった場合でも、適正な雇用安定措置の履行に向けて取り組みます。また、令和2年4月1日に施行された改正労働者派遣法(同一労働同一賃金)については、制度施行より3年目を迎えますが、令和3年度の指導監督の結果を見ても、制度の理解が不十分な事業主が多く見受けられることから、適切な制度運用が実施されるよう重点的に助言・指導に取り組みます。
次に最近の法改正の状況について、令和4年10月1日に求職者が安心して求職活動をできる環境の整備と、マッチング機能の質の向上を目的とした改正職業安定法が施行されます。具体的には、「情報の的確な表示」、「個人情報の適正な取扱い」、「届出制の創設」等を求めるものであり、職業紹介事業者も含めたルールの整備を行うことにより、官民が一体となって労働市場の強化を図ろうとするものです。
「派遣事業・請負事業の適正化に向けた研修会」を今年も11月に開催予定していますが、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響で参加者が大幅に減少したことから、今年度はweb方式での開催、YouTubeでの配信を予定していますので是非参加、視聴をお願いします。
最後になりますが、我が国の労働市場・経済活動において、労働者派遣制度は労働力の迅速で的確な需給調整という重要な役割を果たしています。一方で派遣労働者の保護や雇用の安定といった課題もあります。
皆さま方におかれましては、派遣法や関係法令を十分にご承知いただき派遣先への適切な対応や派遣労働者には教育訓練・キャリアコンサルティングなどを通じて、派遣先、派遣労働者から頼りにされる派遣会社を目指していただきますようお願い申し上げます。
コロナ後に向けた労働環境への取り組み
中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏
全文を読む
コロナ禍の下で、派遣会社の皆さまにおかれましては、派遣社員の雇用と安全の維持・確保に取り組んでこられていることに改めて感謝申し上げます。
2022年も9月に入りましたが、この夏、新型コロナウイルス感染症も第七波に入り、感染拡大に歯止めがかからない状況となっています。私たち派遣業界においても、多くの派遣社員の方が感染し、派遣先様の業務に多大な影響をおかけすることとなっております。主として家庭内での感染が原因で、濃厚接触者も増え出社できない状況が広がっています。派遣元としても派遣先様等の対応、自社内の感染対応と今までにない状況となり苦慮しているところでございます。今後も派遣先様のご理解を得ながら、感染拡大防止と派遣社員の健康の確保に努めてまいりたく存じます。
さて、この2年間は、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止しながら、社会経済活動をできる限り停滞させることなく継続することが、我が国全体におけるもっとも大きな課題のひとつでした。われわれ人材派遣業界でも、派遣社員の安定的な雇用を実現しながら、新たな雇用機会を創出するべく、様々な取り組みを行ってまいりました。例として各自治体様からコロナワクチン接種関連業務や経済の落ち込みを防ぐための各種補助金関連への人的協力依頼があり、人材派遣や業務受託などを積極的に行い、社会インフラ維持の一旦を担ってきました。当協議会においても、この2年間はオンラインを活用とした活動が主となっておりましたが、この6月には制限しながらではございましたが、久しぶりに対面の地域協議会総会と懇親会を開催しました。出席された皆さまからは、「生のコミュニケーションで情報交換ができ非常に有意義だった」との声を多数いただいています。今年度は感染状況をにらみながらになりますが、著名人をお呼びしての講演会などの対面のイベントを実施し交流機会を増やしていきたいと思います。また、「相互の人脈づくりのためインフォーマルな活動も加えたらどうか」との声もありましたので、会員相互の交流を深められることを企画していければと思っています。
また、われわれ派遣業界はこれからの社会的要請となるであろう「雇用安定(労働移動等)の実現やデジタル人材育成」に関する取り組みに対し、ITなどの成長産業への労働移行を促すことにつながるキャリア形成支援、そして多様な働き方と就業機会の提供といった取り組みを通じて、多くの方々が働ける環境の構築に大きな役割を果たすことができる存在かと思います。また高齢者や若年層、子育て世代など多様なニーズを持つ方にも労働市場に参加しやすい環境を整えていくことも益々期待され、改正にあわせた対応に取り組むことで、こうした環境変化に素早く順応していく業界であると思います。一方で、地域における派遣会社だけでは情報の浸透が困難な側面もございます。協会サービスの利用促進や、地域ならではの情報を共有することで、会員企業のレベルアップを図り、業界全体が社会から評価いただけるよう誠実に取り組んでいくことで地域の活性化にお役に立てるよう努めてまいります。
そして、日本人材派遣協会との連携を密にしながら、派遣社員の「キャリア形成支援」を一層進め、また行政当局との対話を続け「コンプライアンス遵守」を推進し、公正な待遇の確保や個別事案対応力強化を図り、業界の健全な発展に尽力し地域に貢献できるよう取り組んでまいります。引き続き倍旧のご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
人材派遣業における最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。会員企業の皆様はもちろん、どなたでもご利用いただけます。
2021年度の相談件数は3,360件となりました(別表参照)。2020年度から相談件数が減少していますが、コロナ禍で相談センターの体制を一時期Web相談のみとさせていただいたことが影響していると考えています。
対象 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 | 2021年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 2,020 | 1,790 | 1,747 | 1,064 | 787 |
派遣会社 | 4,570 | 4,323 | 4,247 | 2,579 | 2,305 |
派遣先企業 | 336 | 363 | 297 | 159 | 98 |
その他 | 117 | 660 | 743 | 445 | 170 |
合計 | 7,103 | 7,136 | 7,034 | 4,247 | 3,360 |
派遣社員からの相談
【業務内容が契約と違う】
毎年、派遣社員から、大変多く寄せられる相談です。
「契約と違う仕事を強いられ、契約内容と違うと伝えるが対応をしてもらえない。」
このような苦情を防ぐためにも、契約締結にあたっては、業務内容を始め、就業場所や労働時間等、十分に理解し納得するよう派遣社員に丁寧に説明し、お互い合意の上で、その内容を書面に残しておくことをお勧めします。なお、業務内容については、合意内容を出来る限り詳細に記入することでトラブルを防ぐことになるのではないでしょうか。そのうえで、契約と明らかに違う仕事をさせられているのであれば、派遣先に是正をお願いするなどの対応が必要です。
【業務内容が契約と違う】
「派遣先の都合で本日をもって終了と派遣会社から連絡があった。今月末までの雇用契約だが、休業補償はしてもらえるか」
派遣元が雇用契約期間中に次の仕事を紹介できなければ、派遣社員は休業手当の請求が可能ですが、休業手当は給与が全額支給されると思っている派遣社員も少なくはありません。民事上は全額払いが原則(民法536条危険負担)ですが、労基法26条の休業手当では、少なくとも平均賃金の60%以上となっていますので、派遣社員に納得いただけるようご説明ください。
派遣元からの相談
【休業手当の支払い】
「スキル不足で派遣契約が中途で終了となった。派遣社員に次の仕事を紹介しても断られ続け、次の仕事が決まらない。休業手当の支払いはいつまで必要か」
同じ条件の仕事を紹介し、派遣社員が断った時点まで支払いが必要となります。
派遣元の方では同じ条件の仕事を紹介したと思っていても派遣社員の希望に合致していないケースも見受けられますので、ご本人の希望に添えるお仕事を紹介できるよう、派遣社員と日頃からコミュニケーションを取ることをお勧めします。また、断られた時は、同じ条件で仕事を紹介したこと、断った理由、そのメール等のやりとり等を記録に残し、派遣元として義務を果たしていたことを確実に記録しておくことが大切です。
【休業手当の支払い(コロナ感染者増加の影響)】
「派遣社員が派遣先でコロナ陽性者になった場合、休業手当の支払いは必要か」
都道府県知事が行う就業制限により労働者が休業する場合は、「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないため、休業手当の支払義務はありませんが、労災保険の療養補償給付及び健康保険の傷病手当金での補償が考えられます。どちらも、手続きには雇用主である派遣元の協力が重要となります。なお、賃金を補償するには、就業規則にあらかじめその旨を記載しておく必要があります。
また、「新型コロナ濃厚接触者となった場合の企業側の意向で自宅待機」の場合は、休業手当を支払うことになります。
【社会保険の適用拡大】
「雇用期間が2か月以内の期間であっても更新の可能性が有れば、最初から社会保険に加入させなければならないか(以下Q&A問38)。」
2022年10月1日からの社会保険に関する法改正により、法改正による社会保険の適用拡大に関する相談が直近で多く見受けられるようになってきました。
日本年金機構では、以下Q&Aを掲載しています。ご確認ください。
短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大Q&A集(令和4年10月施行分)
派遣先からの相談
【派遣料金の支払い、代替要員】
「派遣社員が年休を取得した場合、休暇分も派遣元に派遣料金を払わなければならないか、また、代わりの派遣社員を派遣してもらうことは可能か」
派遣先との契約上、派遣元は派遣社員が年休を取得する場合には代替要員を派遣しなければなりません。代替要員を派遣しなかった場合、派遣先は債務の提供がなかったとして、派遣元にその日分の派遣料を支払う必要はありません。
なお、派遣社員が自己都合等で退職した場合、派遣元は、派遣先と派遣社員を交代する等の対応の相談をし、代替要員を送る必要があります。派遣元が代替要員を送れない場合は、派遣契約の債務不履行として派遣先から損害賠償を請求されることもありますので、慎重な対応をお願いします。
何かご不明な点がございましたら、相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~19:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
お問合せフォーム
この度、中部地域協議会は愛知労働局と対談形式で『派遣事業の最新動向や取り組みを語る』をテーマに、2020年の改正派遣法に伴う「同一労働同一賃金」に対応する行政、派遣元、それぞれの取り組みや、日本人材派遣協会と中部地域協議会のコンプライアンス遵守、派遣社員のキャリアアップ形成支援などの内容で意見交換をいたしました。
また、中部地域協議会の広告として、加入会員の各社名も掲載し、会員様のお役に立てられる内容記事となっております。
今後も行政との協力関係を維持し、業界や地域の皆さまへの貢献に努めて参ります。
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第28号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 田﨑 博道氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご理解を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
今夏は、新型コロナウイルスの猛威により医療体制が危機的な状況となる中で、さらに8月には中部地方も含む各地で発生した豪雨による被害も重なるなど、大変な苦難に直面いたしました。被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、この難局を乗り切るため献身的に取り組まれておられる関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。
このような難局においても、派遣会社の皆様が、派遣社員の雇用と安全の維持・確保に向けて全力で取り組んでこられていることに改めて敬意を表します。先日開催された厚生労働省幹部と人材サービス関連業界団体との意見交換においても、派遣業界の取組みに対して理解と評価をいただいております。
派遣協会では、2大中核事業の「コンプライアンス支援事業」と「キャリア形成支援事業」を、会員の皆様が派遣会社として社会の期待に応える事業活動を行う上での重要な支援策と位置づけており、本年度も一層強化しております。関連法令関係の最新情報の発信や支援ツールの提供など具体的で役に立つ支援策を拡充させるとともに、派遣社員の雇用機会創出に向けた取組みをサポートするため、会員企業の社員向けに「キャリア形成支援者の在り方を考えるワークショップ」を本年度より開催しております。既に多数の方に受講いただいき、ご評価の声をいただけていると感じております。
また、派遣業界の取組みが社会に広く理解していただけるように、広報活動も積極的に展開しております。本年度は新たに、有識者を招き、派遣業界を取り巻く環境変化や課題、今後の派遣事業の在り方などをテーマに講演いただく「JASSAフォーラム」をシリーズで開催することとしました。8月に「派遣労働者のキャリア形成と雇用安定措置」をテーマにオンラインで第1回を開催し、中部地域協議会の皆様をはじめ全国の多数の会員の皆様にもご参加いただいております。
わが国は、コロナ禍等による変化に留まらず社会構造全体が大きな変革期にあり、雇用システムも大きな転換期にあります。政府においては、派遣業界にも影響のある政策議論が進められております。このような時代において、派遣会社としてどのような役割を果たしていくのか、どのように対応していくのか問われております。派遣協会としては、この問題に日々真摯に取り組まれておられる会員の皆様に貢献できるよう、各地域協議会の皆様との連携を強化し、一歩先を行く想像力を働かせ取り組んでまいりたいと思います。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の適正な運営に向けて
愛知労働局需給調整事業部長 大嶋 健二氏
全文を読む
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆さま方には、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
さて、最近の愛知労働局管内の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、令和2年12月には有効求人倍率が1倍を切り0.99倍まで低下しました。その後、徐々に上昇し、この6月には1.20倍と着実に改善しておりますが、引き続き注意する必要があると判断しているところです。
この間、愛知労働局需給調整事業部では、コロナ感染に係る派遣労働者の雇用維持のため、派遣元事業主に対して、昨年度は5回、今年度は5月に派遣労働者の雇用維持等に対する文書による要請を行いました。中部地域協議会の会員企業の皆さま方をはじめ、派遣元事業主の皆さまにおかれましては、必要な雇用安定措置への適切な対応や雇用調整助成金及び新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金等を活用した雇用維持にご尽力いただき感謝申し上げます。8月27日には今年度2度目の緊急事態宣言が愛知県に発令されるなど新型コロナウイルス感染症の終息に目途が立たない状況ではありますが、引き続き派遣労働者の雇用の安定のための対応をお願いいたします。
さて、こうした状況の中、労働者派遣法施行規則の一部を改正する省令が施行され、キャリアアップ措置や雇用安定措置等の派遣元の責務が強化されました。
強化された内容は、一点目は、令和3年1月1日から派遣労働者として雇用する労働者に対し、教育訓練やキャリアコンサルティングの内容について説明することが必要となったこと、二点目は、派遣元事業主は、労働者派遣が契約の解除がなされた場合、新たな就業先の確保ができない場合には、休業等を行い、日雇派遣労働者の雇用維持、休業手当の支払い等の労働基準法等に基づく責務を果たすべきことが明確化されたこと、三点目は、これまでも派遣元事業主は、派遣労働者の雇用安定措置を講じる必要がありましたが、令和3年4月1日より当該雇用安定措置を講じるにあたっては、予め派遣労働者から希望する措置の内容を聴取することが義務化され、派遣労働者から聴取した内容について派遣元管理台帳への記載が必要となったこと、四点目は、事業所毎の派遣労働者数、派遣先数、マージン率、教育訓練については、これまでも情報提供の対象項目でしたが、新たに労使協定の締結の有無が追加され、原則、インターネットの利用による情報提供が必要となったことです。
次に、令和2年4月1日に施行された派遣先の労働者と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消するため、派遣元事業主は派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することとなり、約9割の派遣元事業主が労使協定方式を取り入れています。この労使協定方式では、過半数代表者の選出方法が適切に選任されなかった場合には、派遣先均等・均衡方式による待遇を確保しなければならなくなりますので、過半数労働者が当該者の選任を指示していることが明確になる、民主的な手続きをお願いいたします。
また、今年度は、派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的として、職種・地域ごとに一定の要件を満たし、労使で合意した場合に、平成30年度の統計調査等を用いることも可能とした例外的取扱いが示されました。この取扱いは、令和3年度限りの取扱いですのでご留意願います。
なお、令和4年度に適用される『令和4年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について』が令和3年8月6日に発出されました。令和4年度の一般賃金等についてはこの通達を確認のうえ、適切な対応をお願いいたします。
次に、令和3年4月1日施行により、へき地の医療機関への看護師等の労働者派遣、社会福祉施設等への看護師の日雇派遣が可能となり、さらに、令和3年4月23日施行によりへき地以外のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣が可能となったところです。
へき地の医療機関への看護師等の労働者派遣については、各都道府県のへき地医療支援機関等による事前研修の実施、派遣先による事前研修終了の確認、教育訓練の実施がされたことを確認のうえ派遣していただきますようお願いいたします。
へき地以外のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣については、コロナワクチン接種を行うへき地以外の市町村が設置する特設会場、集団接種を行う医療機関等を含む病院又は診療所において、看護職員が行う診療補助行為等のうち予防接種に係るものに限られ、厚生労働大臣が指定する期間の令和4年2月28日までとなりますのでご留意をいただきますようお願いいたします。
最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆さま方におかれましては、新型コロナウイルス感染症には十分お気をつけいただき、引き続き、適正な事業運営に努めていただきますようお願いします。
多様化する派遣社員の働き方への取り組み
中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏
全文を読む
コロナ禍の下で、長く厳しい事業環境が続く中、派遣会社の皆さまにおいては、派遣社員の雇用と安全の維持・確保に取り組んでこられていることに改めて感謝申し上げます。
昨年来から新型コロナウイルスの感染状況も変異株による感染の広がりで第5波に襲われ、緊張感が高まるこの厳しい環境下において、皆さまのご努力で職種や業種で違いはあるものの、概ね派遣先企業の皆さまのご理解もいただき、派遣社員の雇用はなんとか持ちこたえられている状況でございます。
コロナ禍で当協議会の活動内容も一変いたしました。今年度の定時総会は、6月23日(水)名古屋市のウインク愛知で行いました。残念ながら会場参加は会長、副会長、幹事、監事会社のみとし、多くの会社様は委任状での出席による小規模開催となりました。今総会では、役員体制に変更があり、副会長3名が全員交代となりました。新しく、トヨタすまいるライフ(株)人材サービス部 部長 谷澤 由美子様、パーソルテンプスタッフ(株)執行役員 本部長 鈴木 博之様、(株)リクルートスタッフィング 東海ユニット長 小澤 一広様が就任されました。フレッシュな思考と幹事・監事、会員の皆さまに支えられながら活動を進めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
昨年は対面による行事は原則中止、代替としてオンラインによる活動となりました。定期幹事会も極力会場内の出席者を減らす努力をし、現在もハイブリッド方式での定期開催を行っております。
そして、研修会等はWebセミナーに切り替え3回開催し、オンラインのメリットを活かすことで、普段参加が難しい地域の方々や各社若手の方々の参加者が大幅に増え、毎回100名を超える規模で実施することができ好評をいただいております。また、実施後アンケートで会員各社の皆様からご意見、ご要望をいただきましたので、今年度はこのお声を活かせるよう努めてまいります。多くの方から、実務セミナーの要望もありましたので、今秋以降には行政の方をお迎えするWebセミナーの開催を予定しております。ぜひお気軽にご参加ください。一方で、ワクチン接種が進み、一定の感染収束をむかえましたら、リアルの研修会や懇親会が早急に会員の皆さまと実現できることを願っております。
さて、今年度は派遣法改正から2年目となり、同一労働同一賃金の新しい仕組みが定着し始めている時期にきております。一般社団法人日本人材派遣協会(以下、JASSA)では、派遣労働者の「同一労働同一賃金」をはじめとする派遣業務に関する各種資料を多く取り揃えておりますので、会員の皆さまは今一度ご確認、ご活用いただき、まだ会員ではない会社様にはこの機会にご入会のご検討をいただければと思います。さらに今年度よりJASSAの新しい取り組みとして、労働市場や労働法制に関する有識者や実務の専門家の方を講師にお迎えし「JASSAフォーラム」という、派遣事業運営に資する最新情報をお届けする会員様向けWebセミナーを複数回開催予定にしておりますので、ご参加いただきたく存じます。そしてJASSAの2大中核事業である「コンプライアンス支援事業」と「キャリア形成支援事業」は、JASSAが会員の皆様に対する支援策として、重要性がより増しているものと考えており、当協会もJASSAと一層連携を深め、JASSAキャリアカレッジ、JASSAリーガルテストを地域の皆様へも推進してまいりたく存じます。
最後に、コロナ禍においては予測できない出来事の中で、更なる新しい働き方が求められています。この転換期において、当協議会では派遣会社として、お客様である派遣先企業の就業環境の変化に対応し、派遣社員の新しい働き方にふさわしいスキルや能力開発、キャリア形成支援を行い、派遣事業を通じ、労働力需給調整の社会的役割を果たし、ひとりでも多くの方に多様な働き方の提供や機会の創出、そしてキャリア形成支援を通じ雇用の安定を図ることに努め、業界の健全な発展に尽力してまいりたく存じますので引き続きよろしくお願いいたします。
人材派遣業に於ける最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。会員企業の皆様はもちろん、どなたでもご利用いただけます。
2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため緊急事態宣言期間中はメール相談のみとさせていただいたこともあり、相談件数は2019年度の7,034件から減少し、4,247件となっています(別表参照)。
対象 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 | 2020年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 2,013 | 2,020 | 1,790 | 1,747 | 1,064 |
派遣会社 | 4,484 | 4,570 | 4,323 | 4,247 | 2,579 |
派遣先企業 | 298 | 336 | 363 | 297 | 159 |
その他 | 206 | 117 | 660 | 743 | 445 |
合計 | 7,001 | 7,103 | 7,136 | 7,034 | 4,247 |
【派遣社員からの相談】
●就業条件の相違
「就業条件が違っている(話が違う)」という相談は常に多く寄せられております。
派遣社員との間で、「言った」「言わない」の水掛け論となるケースが多いものです。就業条件は、口頭で伝えるだけではなく、書面(メールを含む)を残すことがトラブル回避となります。
なお、募集時と採用時で就業条件が違っても、お互いが合意し、労働者が内容を了解していれば違法ではありません(厚生労働省)。最終合意内容が、両当事者の合意ということになります。
あとから苦情が出ないように、就業条件の内容は、派遣社員が理解、納得できるまで十分に説明し、書面で合意内容を残しておくことをお勧めします。
【派遣元からの相談】
●雇用安定措置
雇用安定措置の相談では、派遣法30条1項の第1号により派遣先に直接雇用の依頼をしてみたが、派遣先から断られ、次に第2号による新たな派遣先を紹介したものの、派遣社員から拒否されたというご相談が少なくありません。派遣社員の希望も考慮しながら「合理的な範囲」の派遣先を紹介したものの、何件紹介しても本人から「希望条件に合わない」と拒否されてしまうというものです。
新たな派遣先を紹介する時には、派遣会社だけの判断で合理的か否かを決めるのではなく、派遣社員が希望する就業条件を事前に確認し、すり合わせをしておくことが大切です。3年を迎える前に、余裕をもって派遣社員に寄り添ってその希望や環境についてヒアリングを重ねていただければと思います。そのためには、日頃から、派遣社員とは上手くコミュニケーションをとり、ニーズに即したマッチングができるよう慎重な対応をお勧めします。
●コロナ禍での就業環境の改善
派遣社員が「緊急事態宣言中はコロナが怖いので通勤したくない」、また「就業中の派遣先で、コロナ罹患者が連続で発生していて、対応が整うまで職場では怖くて働くことができない」等の不安を伝えられ、出勤を拒否する、派遣就業を辞めたいとの申し出があるなどのケースも生じています。
そのような場合は、派遣先でテレワークを取り入れているのであれば派遣社員にも同様に利用できるようにお願いするのがよいでしょう。業務の都合上、フルタイムでのテレワークが難しいときは、週に数日だけでもお願いできないか、または、時差出勤に対応いただくことはできないか等も考えられます。このように職場環境の具体的な改善を派遣先にお願いし、その結果を派遣社員に説明し、納得して就業していただくような対応が求められます。
なお、テレワークへと切り替える場合、就業条件に変更が生じますので、派遣社員とも十分に話し合い、今一度契約内容を見直す必要があります。
派遣協会では、「派遣社員の在宅勤務導入に当たっての留意点」のリーフレットや覚書の雛型をご用意しておりますので、是非ご活用ください。
●派遣社員の待遇決定
8月6日付の職業安定局長通達、職業安定業務統計(通達内の別添2「職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)」)では、いくつかの職種において基準値が「-」と表示されていますが、求人件数が30件未満の職業は「-」と表示とされています。
この「-」と記された職種については「昨年の数値を使うことはできません」(東京労働局見解)。
どの数字を利用するかは、労使で話し合いをすることを前提に、以下の対応をしていただくことになります。
上記の1、2を選択した場合、労使協定の中に、今回その職種を別の取り扱いにしたことについて記載する必要があります。例:「●●職種について令和2年職業安定統計に数値が示されていないため」等。
当協会では、「相談センター」を設置して、労働者派遣事業アドバイザーが、派遣法をはじめとした派遣にまつわるご相談に応じています。
なお、相談センター所在地の東京都で緊急事態宣言中・まん延防止等重点措置発令中は、誠に勝手ながらお電話での対応は休止とさせていただいており、当協会ホームページのトップページ「相談センター/キャリアカウンセリング」からの「お問い合わせフォーム」にてご相談に応じています。
平素は、当協議会の活動にご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。
この度、3/18(木)に元ラグビー日本代表 廣瀬俊朗氏をお招きしてオンラインセミナーを開催いたします。
コロナで環境が大きく変わり、働き方が変容する中で「令和時代の最高のチームづくり」と題してチームビルディング、リーダーシップ、育成をテーマにお話し頂きます。
1.日時
2021年3月18日(木)14:00~15:30
2.開催方法
WEB会議システムZoomを使って、オンライン実施
3.内容
「令和時代の最高のチームづくり」
廣瀬 俊朗 氏
1981年生まれ。元ラグビー日本代表キャプテン。
現役引退後は「ビジネス・ブレークスルー大学大学院」にて経営管理修士(MBA)を取得。
ラグビーW杯2019では公式アンバサダーとして活動。試合解説をはじめ、国歌を歌い各国の選手・ファンをおもてなしする「Scrum Unison」や、TBS系ドラマ「ノーサイド・ゲーム」への出演など、幅広い活動で大会を盛り上げた。現在は、株式会社HiRAKU代表取締役として、ラグビーに限定せずスポーツの普及、教育、食、健康に重点をおいた様々なプロジェクトに取り組んでいる。
2020年10月より日本テレビ系ニュース番組『news zero』に木曜パートナーとして出演中。
4.対象者
中部地域協議会加入企業 従業員
5.定員500名(無料)
※先着順となります。予めご了承くださいませ
※会員企業1社あたりのご参加人数に制限はございません
中部地域協議会・お問い合わせ先
事務局 :株式会社サンスタッフ 経営改革部 広報・渉外グループ 植木 真由美
TEL:080-5155-8925(業務携帯)
※非加入会社様からのお問い合わせもお待ちしております。
コロナで大変な状況は続いておりますが、人材派遣業界としてOneTeamで乗り越えていきたいという想いで企画いたしました。
若手の方から幅広くお役立て頂けると思います。
ご多忙のことと存じますが、是非ご参加くださいますよう、お願い申し上げます。
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第27号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 田﨑 博道氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご理解を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
2020年度は、いわゆる同一労働同一賃金をはじめ、様々な労働政策がスタートする大転換点にありますが、世界的な新型コロナウィルス感染症の拡大は、日常生活のみならず、経済活動にも多大な影響を及ぼしています。
あらためて、感染によりお亡くなりになられた方々に衷心よりお悔やみを申し上げるとともに、治療中の皆様にお見舞いを申し上げます。また、感染拡大の中、医療現場の最前線で見えない敵と闘い続けている医療従事者や私たちの生活を支えていただいているエッセンシャルワーカーの皆様に、心より敬意と感謝の意を表します。
この大きな環境変化の最中にあっても、派遣社員も含めてすべての働く人が、安全に、健康に、安心して働けるようにしていかなくてはなりません。私たち派遣業界には、派遣先企業をはじめ各ステークホルダーの皆様と連携して、派遣社員の健康と雇用を守る取組みを継続して推し進めていくことが求められています。
そして、このような厳しい状況下であっても、多くの人材を必要とする業界、業種、企業は存在しています。労働市場における需給調整機能を担う我々には、これまで以上にその機能を発揮し、雇用の創出にも貢献していく役割があると考えています。
一般社団法人日本人材派遣協会としては、会員各社における一層のコンプライアンスの徹底をバックアップしていくとともに、 刻々と変化する人材ニーズを踏まえ、派遣社員の方々が新たな働き方に挑戦できるようにスキルアップの支援を行い、キャリアコンサルティングやキャリア形成支援にも継続して注力していきます。
こうした人材派遣業界の取組みが、社会に広く理解していただけるように積極的な広報活動も展開していきます。
中部地域協議会会員の皆様と共に、派遣社員はもとより各社で働く従業員をしっかりと支え、確かな未来の実現に貢献していきたいと思います。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の動向等について
愛知労働局需給調整事業部長 牧山 清氏
全文を読む
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方には、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。また、労働力需給調整機能の一つとして、大変重要な役割を担っていただいており感謝申し上げます。
さて、最近の雇用情勢ですが、昨年12月の愛知県の有効求人倍率は1.82倍でしたが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、7月の有効求人倍率は、1.07倍まで低下したところです。
この間、愛知労働局では、コロナ感染症に係る経済への影響により、労働者派遣契約の期間満了に伴う契約の不更新や契約満了前の契約解除等が大いに懸念されたことから、県内の派遣元事業主等に対しまして、派遣労働者の雇用維持の要請等を複数回にわたって行いました。中部地域協議会の会員企業の皆様方をはじめ、派遣元事業主の皆様におかれましては、派遣先への周知を含めて必要な雇用安定措置への対応や雇用調整助成金等を活用した雇用維持にご尽力いただき感謝申し上げます。
コロナ感染症の終息が見えない中ではありますが、引き続き、法令等に基づき、派遣労働者の雇用の安定とその保護を図るための対応をお願いします。今後も、愛知労働局では、雇用安定措置等の実施状況等を確認するとともに、指導等が必要な場合は、派遣先を含めて実施することとしています。
こうした状況の中ではありますが、本年4月1日に派遣先の労働者と派遣労働者との不合理な待遇差をなくすための改正労働者派遣法が施行されました。昨年度から改正法に対応すべく、しっかりと取り組んでいただいていることかと思います。
改正事項の一つである「派遣労働者の不合理な待遇格差解消のための規定の整備」に関して、「労使協定方式」による場合は、「労働者派遣事業報告書」に労使協定書を添付することとされています。本年6月に提出された当該報告書には約90%の割合で労使協定書が添付されている状況です。この労使協定方式では、過半数代表者の選出方法に関して、過半数労働者が当該者の選任を支持していることが明確になる民主的な手続きが必要です。過半数代表者が適切に選出されなかった場合には、派遣先の通常の労働者との均等・均衡による待遇を確保しなければならないこととなります。
いずれにいたしましても、皆様方、派遣元は、派遣先の待遇情報を適切に収集し、不合理な待遇差が生じないよう適切な対応と派遣労働者に対して丁寧な説明を行っていただき、派遣労働者が不合理な待遇差を感じることがなく勤務していただくことが肝要と考えています。
また、厚生労働省では「令和3年度に適用される同種の業務に従事する一般の労働者の賃金(一般賃金の)額等について、「毎年6月~7月に通知で示す予定」とされていますが、本年は秋を目途として、新型コロナウイルス感染症の雇用・経済への影響を踏まえた一般賃金の額等が示されると承知しているところです。
次に、令和元年度の愛知労働局における労働者派遣事業等指導監督状況ですが、派遣先に対する文書指導率は77.0%と昨年度と比べ改善はされたものの非常に高い指導率であり、「派遣先管理台帳の不備」や「抵触日事前通知が適切になされていない」等の事例が文書指導を行った派遣先の半数以上で見受けられました。また、派遣元に対する文書指導率は、昨年度に比べ19.7ポイントも上回り56.2%と2社に1社の割合で文書指導を行ったこととなり、非常に残念な結果となりました。主な指導事例は、「就業条件等の明示の不備」や「抵触日通知を受けずに新たな派遣契約を締結する」等でした。
皆様方におかれましては、常に最新の法令に沿った関係書類の書式で、かつ、適正な手続きをお願いするとともに、大臣許可事業者として派遣先への適切なアドバイスをお願い申し上げます。
次に労働者派遣制度については、平成27年度改正法の附則において、施行後3年を目途とした検討が求められる等により、現在、労働政策審議会労働力需給制度部会で、今後の労働者派遣制度の在り方が検討され、令和2年7月に中間整理が示されました。今後、中間整理に基づき、本省において必要な省令等の改正が行われると承知しているところです。
最後に、貴協議会並びに会員の皆様方におかれましては、これからも派遣労働者、派遣先、そして誰からも頼りにされることを目指していただきますよう心からお願い申し上げます。
派遣社員の健康と雇用を守る取り組みを
中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏
全文を読む
先般、日本人材派遣協会・中部地域協議会の定時総会において、新たに会長職を拝命いたしました丸山恭一でございます。日頃は中部地域協議会の運営にご理解とご協力を頂戴し、心より御礼申し上げます。
今年度の定時総会は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、出席者をごく少数に絞り、大半は委任状に基づく総会となりました。懇親会も開催を断念したため会員の皆様にお目にかかれず、残念な思いが残りました。
さて、6月上旬に愛知労働局 需給調整事業部 牧山部長を新旧役員で訪問させていただきました。時節柄、加藤厚生労働大臣から発出された「新型コロナウイルス感染症に係る派遣労働者の雇用維持に関する要請書」のお話がありました。先方より業界への質問を受け、「派遣先の業界によってばらつきがあり、特に観光や飲食などサービス業が厳しく、次第に製造業にも及んできていること」また「派遣元として、派遣先と連携しながら、感染防止に努めつつ、時差勤務やテレワークなど新しい働き方にチャレンジしていることや、雇用調整助成金への関心が高く、これを利用しながら雇用確保に努力していること」などを報告いたしました。
一方、中部地域協議会では、コロナ禍においても会員の皆様に、よりお役に立てる情報をご提供できるよう、Webセミナーの形をとり、7月28日に「実戦!雇用調整助成金活用セミナー」と題して緊急の勉強会を開催致しました。愛知労働局 あいち雇用助成室 松山室長補佐にご講演いただき、ご参加いただいた21社30名の会員の方々に対し、雇用調整助成金制度をわかりやすく解説いただきました。セミナー後は、グループ別にWeb会議システム「Zoom」の機能であるブレークアウトルームをつくり、コロナ禍での各社の状況などをオンライン上で意見交換を行い有意義な会となりました。
また、現在コロナの第二波が到来していますが、予防ワクチンの接種や治療薬の開発が進まない限り、人材派遣業界も大きな影響を受け、先行きが不透明の状況が続きます。就任時の会長メッセージでも述べましたが、派遣社員の健康と雇用を守る取り組みを、具体化しながら推進する必要があります。健康管理の強化として、お客様である派遣先企業と協力しながら、①感染拡大防止に向けた方針の策定と共有②それに伴う社員の行動の変容③テレワークなど新しい働き方への支援④ソーシャルディスタンスの確保・マスクの着用・手洗いなど新しい生活様式への支援を進めてまいります。雇用維持については、①派遣先企業のご協力を得て派遣契約の更新②不更新の場合には、新たな就業機会の確保③休業や教育訓練時の雇用調整助成金等の活用などの努力をしてまいります。
最後になりますが、10月21日(水)には、毎年恒例となっている中部地域協議会主催での研修会を開催します。この状況下でございますので、Webセミナーの形で行いますが派遣会社の中堅・若手社員に元気を出してもらおうという企画です。後日ご案内させていただきますが、Webならではの取り組みのため人数に制限がございませんので、できるだけ多数の方にご視聴いただきたく存じます。
今後も会員企業の皆様と共に、協議会活動を盛り上げていきたいと思っておりますので、より一層のご理解とご協力、忌憚のないご意見・ご提案をお願い申し上げます。どうぞよろしくお願いいたします。
人材派遣業に於ける最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。
2019年度の相談件数は7,034件となりました。2015年9月30日の改正派遣法施行前後は大幅に増加していましたが、2016年度~2019年度はおおむね横ばいの件数(7,000件程度)となっています。(別表参照)。
対象 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 | 2019年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 2,482 | 2,013 | 2,020 | 1,790 | 1,747 |
派遣会社 | 7,514 | 4,484 | 4,570 | 4,323 | 4,247 |
派遣先企業 | 473 | 298 | 336 | 363 | 297 |
その他 | 369 | 206 | 117 | 660 | 743 |
合計 | 10,837 | 7,001 | 7,103 | 7,136 | 7,034 |
2019年度は同一労働同一賃金、本年度にはいってからは新型コロナウィルス感染症関係の相談が多く寄せられていました。
1.派遣社員からの相談
① 新型コロナウィルス感染拡大関連の雇止め【コロナ関係】
「既に9月一杯で終了を派遣元から伝えられていましたが、その後更新がありません。派遣元も「次を探しましょう」とは言うものの、コロナの影響で次が見つからず不安です。」
コロナの影響で経済が大きく低下しているので仕事が見つけ辛くなっています。働き方や条件の幅を広げることや、派遣会社や行政の教育訓練制度の利用、国の助成金制度の利用を検討すること等をアドバイスしています。
② 在宅勤務について【コロナ関連】
「直雇用の人は在宅勤務で、派遣社員だけが危険な思いをして通勤している。差別的な取り扱いは禁止されたはずなのに納得できません。」
職務内容が違えば、業務の場所や条件が異なることはあります、とご相談者に説明をしても納得してもらえない場合があります。不合理な差別と合理的な区別の違いの説明が十分になされていなようです。厚生労働省の「不合理な待遇差を解消するための点検・検討マニュアル(派遣業界編)などを参考に派遣社員への丁寧な説明をお願いします。
③ 退職金・交通費について【働き方改革関係】
「退職金の規程は、派遣会社にはありますが、派遣社員にはありません。他社の派遣社員は交通費の支給があるのに私にはありません。」
退職金や交通費の支給がなくても、賃金テーブルの派遣賃金が一般賃金と同等以上であれば、全体として派遣賃金の中に含まれています。これも派遣社員への説明不足が感じられるので前述のマニュアル等を利用し丁寧な説明をお願いします。
派遣元の皆様には、派遣社員に対して派遣法や派遣で働く上で必要となる労働関係法令、また、それらの法改正時にはその改正概要を説明していただくよう行政通達が出ております。是非とも派遣社員にも理解できるよう周知・啓発をお願いします。なお、労働関係法令をやさしく解説した派遣社員や派遣先企業に周知・啓発する資料を厚生労働省で作成しておりますので、ダウンロードしてご活用ください。
労働者派遣法を派遣労働者へ周知・啓発する際の資料
(厚生労働省のHP( http://www.mhlw.go.jp/)より、ダウンロードしてください。)
2.派遣元からの相談
① 労使協定方式の内容【働き方改革関係】
「労使協定方式を選択する場合の、賃金テーブルの決定の方法、通勤手当の支払いや退職金制度の選択はどうすればよいか」
これも前述の「不合理な待遇差を解消するための 点検・検討マニュアル(派遣業界編)」等を紹介して内容をご説明しています。
② 新型コロナウィルス感染症の拡大に伴った派遣社員の休業要請【コロナ関係】
「派遣先から派遣社員に対して休業要請があり、休業補償の交渉をしたところ、休業要請は、会社の都合ではなく、今回のコロナは天災なので会社の原因ではないため補償はしないと言われた」
厚生労働省のQ&Aでも、コロナ感染の影響は天災ではなく、休業要請も国の命令ではないとしています。つまり、派遣先が休むか否かは、派遣先の判断にすぎません。従って、派遣料金を請求することは可能です(民法536条2項)。
③ 雇用調整助成金【コロナ関係】
「助成金が支払われた場合、派遣先が支払った休業手当を返却してほしいと派遣先が主張している。返却しなければいけませんか」
派遣先が派遣元に支払うのは派遣料金であって、休業手当ではありません。休業手当の原資とはなりますが、休業手当そのものではありません。また、雇用調整助成金は労働者に休業手当等を支払った雇用主に助成するものですから、雇用調整助成金を受け取ってから休業手当を支払うのではありません。返却すべき法的な根拠もありませんが、最終的には派遣元の判断となります。
当協会の相談センターは、当協会の会員様をはじめ、どなたでもご利用できます。
何かご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお電話ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~19:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第26号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 水田 正道氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご理解を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
我が国の経済は2012年より緩やかな景気回復を継続しており、雇用環境も着実に改善してきました。2019年7月の有効求人倍率は全国1.59倍と引き続き高い水準に留まり、完全失業率も2.2%と低水準が維持されています。
一方で、日本社会の長期的な課題として、少子高齢化による構造的な労働力人口の減少が顕在化してきています。政府は、こうした労働市場の変化に対して、働き方改革を推奨し、時間外労働の上限規制や有給休暇の取得促進、不合理な処遇格差の解消(同一労働同一賃金)など、労働法制の改正を進めています。
また、経済界では、就業者の多様性に応じた人事制度や雇用形態を導入する企業が増加するとともに、人材派遣やアウトソーシングなど外部人材の活用を進める企業も増えています。
こうした環境において日本人材派遣協会は、会員各社が一人一人の派遣社員のキャリア形成をサポートし、また、顧客企業の人材ニーズに的確に応えられるよう各種の事業運営支援に努めています。
派遣社員へのキャリア形成サポートとしては、会員各社の従業員を対象とした「キャリアカウンセリング・スキルアップセミナー」の開催、会員各社の派遣社員を対象に1,500を超える教育コンテンツが受講可能なeラーニングプラットフォーム「JASSAキャリアカレッジ」の提供などを実施しています。
コンプライアンス遵守の支援としては、人材サービスを提供する上で重要な労働関連法規に関する最新情報の提供やセミナーの開催、労働関連法規の知識修得を支援するeラーニングツール「JASSAリーガルテスト」の提供を実施しています。
また、2020年4月に改正施行される派遣法(派遣社員の同一労働同一賃金)についても、法律要件の解説や制度設計のサポートなどを進めています。
私たち人材派遣協会が目指しているのは、誰もがライフスタイルにあわせた働き方を選び、生き生きと誇りを持って働き続けられる多様な就業機会を創出することです。そして働く人が能力を最大限に発揮し、人々の力によって持続的に成長する活力ある社会の実現です。今後一層、一人一人の派遣社員にとって有意義なキャリア形成と雇用の安定を実現すると共に、我が国の更なる発展に貢献して参りたいと存じます。
最後になりますが、中部地域協議会会員の皆様の一層のご発展をお祈りすると共に、引き続き倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の動向等について
愛知労働局需給調整事業部長 牧山 清氏
全文を読む
平成31年4月1日付で、愛知労働局需給調整事業部長を拝命しました牧山でございます。
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方には、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
最近の雇用情勢ですが、7月の愛知県の有効求人倍率は、1.94倍で全国を0.35ポイント上回り、依然として高い水準で推移しており、愛知県の雇用情勢は改善が進んでいると判断しているところです。しかしながら、企業サイドから見れば、必要な人材が集まらない状況にあります。
このような雇用情勢の中、中部地域協議会の皆様方をはじめ派遣業界の方々には、労働力需給調整機能の一つとして、大変重要な役割を担っていただいており感謝申し上げます。
さて、平成27年9月に労働者派遣法が改正され、皆様方におかれましては「雇用安定措置」、「キャリアアップ措置」、「均等待遇措置」等に対応すべく、しっかりと取り組んでいただいていることかと思います。
加えて、「働き方改革関連法」が昨年7月6日に公布され、改正労働者派遣法が令和2年4月1日に施行されます。改正点のうち、「不合理な待遇差をなくすための規定の整備」については、「派遣先の労働者との均等・均衡待遇(派遣先均等・均衡方式)」と「一定の要件を満たす労使協定(労使協定方式)」のいずれかの方法を選択し、派遣労働者の待遇を確保していただくこととなります。
「派遣先均等・均衡方式」では、労働者派遣契約締結前に派遣先からの比較対象労働者の待遇情報の提供を受ける必要があり、今回の同一労働同一賃金を目的とした制度改正の根幹となるものです。皆様方には、派遣先の待遇情報を適切に収集し、不合理な待遇差が生じないように適切な対応をしていただく必要があります。一方、「労使協定方式」では、派遣労働者等の方々としっかりと向き合って、協議を重ねながら合意形成を図り、公正に評価される、納得感が得られるような協定の締結が重要です。こうしたことを通じて、雇用形態に関わらない公正な待遇が実現されれば、人材の確保や個々の派遣労働者の方々の働くモチベーションの向上等に必ず繋がると考えており、大いに期待しているところです。
改正労働者派遣法では、これらに加えて「派遣労働者に対する説明の義務の強化」がされており、労働条件に関する事項や不合理な待遇差を解消するために講じる措置について、丁寧に説明を行っていただき、派遣労働者が不合理な待遇差を感じることがなく勤務していただくことも肝要と考えております。
皆様方の人財であります派遣労働者の方々が、これからも納得感と意欲を持って働き続けていただくためにも、派遣労働者及び派遣先と緊密なコミュニケーションを取りながら、改正法施行日に向けて、しっかりと準備を進めていただきますようお願い申し上げます。
また、新たな動きといたしまして、本年6月21日に閣議決定された「規制改革実施計画」において、「日雇派遣に関して労働者保護に留意しつつ、副業として行う場合の年収要件の見直しを検討し、速やかに結論を得る。」等とされているところです。今後の議論の行方を注視しているところです。
次に平成30年度の愛知労働局における労働者派遣事業等指導監督状況ですが、1,632事業所について訪問指導を実施し、文書指導率は46.8%で前年度と比べ13.9ポイント改善したものの、依然として高い指導率でした。特に派遣先に対する文書指導率は81.6%と非常に高く、「派遣先管理台帳、就業状況報告の法定項目漏れ」や「抵触日の事前通知が適切になされていない」とした事例が、文書指導を行った派遣先のうち半数以上で見受けられたところです。このため、本年度におきましても重点的に派遣先への訪問指導を実施することとしています。皆様方におかれましては、労働者派遣事業に係る関係書類は常に最新の法令に沿った書式に更新していただく必要があります。その上で、労働者派遣事業の専門家として、派遣先への適切なアドバイスをお願い申し上げます。
最後に、貴協議会並びに会員の皆様方におかれましては、労働力需給調整機能の一つとして、これからも派遣労働者、派遣先、そして誰からも頼りにされる派遣業界・派遣会社を目指していただきますようお願い申し上げます。
派遣業界の将来に向けて ~中部地域の発展とともに~
中部地域協議会 会長 猿渡 智佐登氏
全文を読む
先般、日本人材派遣協会・中部地域協議会の定時総会において引き続き会長職を拝命いたしました猿渡智佐登でございます。日頃は中部地域協議会の運営にご理解とご協力を頂戴し、心より御礼申し上げます。
今年度の定時総会は、例年以上に多くの会員の皆様にご出席いただき誠にありがとうございました。迫りくる来年4月の同一労働・同一賃金への関心の高さが、定時総会への出席に繋がったのではと思っております。
この7月に厚生労働省から局長通達が出されましたが、今回の改正においては施行後の暫定期間がなく、大変タイトなスケジュールの中、どの派遣元も様々な準備に追われていたのではと思います。規則・規定等の見直しから、制度構築・社員教育をはじめ、就業中のスタッフの皆様方への説明と周知、クライアントである派遣先企業様への同一労働・同一賃金による変更点のご説明とご理解ご協力をいただくための活動など、多方面に亘る対応を余儀なくされました。また、今までの法改正とは比較にならないほどの大きな変更であるため、より正しい理解と知識を以って事業運営に努めなくてはなりません。
そこで、中部地域協議会では会員の皆様により多くの情報をご提供できるよう例年の企画にはない取り組みとして、8月27日に同一労働・同一賃金の勉強会を開催致しました。約50社120名のご出席をいただき、日本人材派遣協会の協力で関東エリアの情報などもご披露いただき、質疑応答形式で大変有意義な会となりました。
これから先、労働市場はますます変化が多様になります。中部地域協議会エリアの殆どの県においては、有効求人倍率が全国平均を上回っており、人材不足は改善されておりません。雇用においても外国人・高齢者・障がい者と様々な分野で必要とされるのが人材サービスです。私共中部地域協議会は、変化の多様に遅れをとらないように、会員企業の皆様に必要と感じていただけるよう協議会運営内容も見直して参りたいと考えております。
会員企業の皆様と共に、派遣業界の成長と、社会貢献の事業であるという認知向上に努め、協議会活動を盛り上げていきたいと思っておりますので、より一層のご理解とご協力、忌憚のないご意見・ご提案をお願い申し上げます。
皆様と共に、成長できること、期待感を以て揚々と進めていけたらと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
人材派遣業に於ける最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。
2018年度の相談件数は7,136件となりました。2015年9月30日の改正派遣法施行前後は大幅に増加していましたが、2016年度~2018年度の3年間はおおむね横ばいの件数となっています。(別表参照)。
対象 | 2012年度 | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度 | 2016年度 | 2017年度 | 2018年度 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 1,532 | 1,618 | 1,936 | 2,482 | 2,013 | 2,020 | 1,790 |
派遣会社 | 8,773 | 6,305 | 6,426 | 7,514 | 4,484 | 4,570 | 4,323 |
派遣先企業 | 507 | 489 | 526 | 473 | 298 | 336 | 363 |
その他 | 402 | 376 | 492 | 369 | 206 | 117 | 660 |
合計 | 11,214 | 8,788 | 9,380 | 10,837 | 7,001 | 7,103 | 7,136 |
派遣社員からの相談
派遣社員からの相談で最も多く寄せられる相談は、派遣元から説明された業務内容と実際の業務内容との相違や途中退職等についてです。
「指揮命令者が変更になり業務内容が契約と違うことを要求される」「一般事務職で派遣されたのに営業職と同じ仕事を要求される」また「就業条件明示書に記載のない業務を一方的に依頼されているが、どうしたらよいか」等々。このような場合、派遣社員の方には就業条件明示書に記載の「派遣元責任者」に相談し、派遣先の状況を確認してもらい、契約内容と相違があれば派遣先に改善していただくよう派遣元に交渉してもらうようお伝えしています。なお、業務内容を改善したうえで就業を継続する方法もありますが、派遣社員、派遣先、派遣元の三者間の契約内容に関する認識の違いである場合もあります。いずれの場合も対応を間違えると派遣社員の不満や不安の原因となり、大きなトラブルとなる可能性もあります。契約締結の際には、労働条件や業務内容を正しく明確に記載した書面を派遣社員に必ず渡すとともに、派遣社員、派遣先とともに認識の違いが生じないようできるだけ丁寧に説明するようにしてください。
派遣元の皆様は、派遣社員に対して派遣法や派遣で働く上で必要となる労働関係法令、また、それらの法改正時にはその改正概要を説明していただくよう行政通達が出ております。是非とも派遣社員にも理解できるよう周知・啓発をお願いします。なお、労働関係法令を派遣社員や派遣先企業に周知・啓発する資料を厚生労働省で作成しております。ダウンロードしてご活用ください。
労働者派遣法を派遣労働者へ周知・啓発する際の資料
(厚生労働省のHP( http://www.mhlw.go.jp/)より、ダウンロードしてください。)
派遣元からの相談
派遣元からは、2020年4月からの派遣社員の同一労働同一賃金について改正派遣法に関する相談が増えてきています。また同一労働同一賃金ガイドラインや職業安定局長通達など行政からの資料公表に伴って、それらに関する質問や相談が増えています。特に「労使協定方式」を選択する場合の賃金テーブルの決定の方法、具体的には通勤手当の支払いや退職金制度の選択に関する問い合わせが多くなっています。
また、今年4月に施行された改正労働基準法の年5日の年次有給休暇の時季指定義務の適切な運用方法についてもお問い合わせがあります。労働者に適切な有給休暇を取得させるために派遣社員本人に自ら年次有給休暇予定表を記入してもらい5日以上の年次有給休暇の取得ができるよう計画的な運用を行うことをアドバイスしています。
派遣先からの相談
派遣先からは、派遣社員が3年を超えた場合に直接雇用する場合の手数料の相談が多く寄せられます。
「契約が終了した後に新たに雇用するのに、手数料を支払わなければならないのでしょうか?」
「派遣元に直雇用の申出をすると紹介料がかかってしまうので、申出をしなければならないですか?」
手数料の支払いに関してはトラブルとならぬよう、紛争防止措置としてしっかりと契約書に記載しておく必要があります。
派遣先に対しては、派遣を適切にご活用いただくために派遣法をはじめ労働関係諸法規を正しく理解いただけるよう、派遣元の担当者は日ごろからコミュニケーションをとり、ビジネスパートナーとして、お互い納得のいくまで説明していただくことが大切です。
当協会の相談センターは、当協会の会員様をはじめ、どなたでもご利用できます。
何かご不明な点がございましたら、ご遠慮なくお電話ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~19:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第25号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
(より見やすくするために、今回よりホームページへの掲載とさせていただきました。)
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会会長 水田 正道氏
全文を読む
中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご理解を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。
さて、景気は緩やかに回復しており、雇用情勢を見ますと2018年7月の有効求人倍率は全国1.63倍と引き続き堅調に推移しております。
今年6月「働き方改革関連法」が可決成立し、施行に向けて労働政策審議会での検討が進められているところです。
派遣業界としては、長時間労働の是正はもとより、同一労働同一賃金の実現に向けて派遣社員の職務に適した処遇と能力の向上に伴う処遇に尽力し、派遣社員のキャリア希望に伴奏するサポートを実施していかなければなりません。
また高齢者や若年層、子育て世代など多様な働き方のニーズを持つ方にも、労働市場に参加しやすい環境を整えていくことが益々期待されております。
当協会の取組みとしては、派遣法をはじめとした労働関連法規の改正情報を会員にお届けするために関連行政の動向掌握に努め、必要なセミナーの開催や会員サイトの充実、労働関連法規の知識向上のためのeラーニング拡充などを行ってまいりますので、ぜひともご活用いただければと存じます。
今後一層、派遣社員にとって有意義なキャリア形成と雇用の安定を実現すると共に、我が国の更なる発展に貢献して参りたいと存じます。
最後になりますが、中部地域協議会会員の皆様の一層のご発展をお祈りすると共に、引き続き倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の動向等について
愛知労働局需給調整事業部長 牧 秀利氏
全文を読む
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆さまには、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。
私が愛知労働局需給調整事業部長に就任してから、約1年半が経過しました。この間の愛知労働局管内の雇用情勢は、就任当初の求人倍率1.8倍台前半から、この7月には1.99倍と着実に改善しましたが、反面、多くの企業では人手不足となっています。
こうした状況の中で、労働者派遣事業報告の集計結果を見ますと、平成29年6月1日現在の派遣労働者数は前年に比べ25.2%増加しており、これは、自ら選んで労働者派遣という形態での就業している労働者が増えてきているのではないかと考えています。
労働者派遣法改正法が平成27年9月30日に施行されてから3年を迎えようとしており、皆さま方におかれましては、改正法に対応すべく取り組んで頂いているところではないかと思います。労働者派遣法はご承知のとおり、法律制定以降、規制緩和の方向で幾度も改正されてきましたが、その中においても、派遣就業は「臨時的・一時的なもの」であること、常用代替の防止を図ることは、労働者派遣法の原則とされてきました。平成27年の改正で、法律条文に「派遣就業は臨時的かつ一時的であることを原則とする」とする文言が加えられ、労働者派遣事業の位置付けが法律上明確にされ、この考えの下、新たな労働者派遣期間の制限として、事業所単位、個人単位による制限が設けられ、派遣先での直接雇用機会確保を前提とした雇用安定措置等が盛り込まれました。
派遣労働者の中には、労働者派遣形態を選んで働く者も増えてはいるものの、他方、直接雇用されることを希望する派遣労働者も多数働いていることはご承知のことと思います。派遣元の行うキャリアコンサルティング等により、派遣労働者の希望を把握し、派遣先での直接雇用の機会を確保する等、雇用安定措置の適切な取組みをお願いします。
また、昨年度から皆さまの取引相手である派遣先には、労働者派遣事業の許可制への一本化による(旧)特定労働者派遣事業の終了、派遣期間制限と期間延長に係る意見聴取等、制度の適正な運用に向けて、周知を兼ねた訪問指導を強化しています。その状況は、平成29年度に訪問指導した派遣先の92.2%に対して文書指導を行い、うち派遣契約関係は51.2%となっています。契約書類の殆どは、派遣元の書式を利用していることを考えますと、非常に残念な結果であります。派遣元である皆さまにおかれましては、常に最新の法令に沿った書式に更新するとともに、派遣事業の専門家として、派遣先へのアドバイスをお願いします。
次に、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が6月29日に国会において可決成立し、7月6日に公布されました。
働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方改革を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等の措置を講じることを目的として、労働基準法等の多くの法律が改正されました。
労働者派遣法については、派遣先の労働者と派遣労働者との不合理な待遇差をなくすため、「派遣先の労働者との均等・均衡待遇」又は「一定の要件を満たす労使協定による待遇」の確保の義務化等が規定され、2020年4月1日に施行されることとなっています。政省令の改正は今後となりますので、詳細につきましては決まり次第お知らせすることとしていますが、着実な準備をお願いします。
最後になりますが、派遣労働者の保護に係って、特に外国人労働者の社会保険への未加入等の事例も散見されます。雇用する労働者の雇用管理は事業主の責務であります。適正な雇用管理には、労働者とのコミュニケーションが大変重要ですので、派遣労働者及び派遣先との意思疎通を図りながら、適正な事業運営に努めていただきますようお願いします。
派遣業界の将来に向けて ~中部地域の発展とともに~
中部地域協議会 会長 猿渡 智佐登氏
全文を読む
本年度より、中部地域協議会会長に選任いただきました猿渡智佐登でございます。初めての大役に戸惑いつつも、会員の皆様にメリットを感じていただけるよう協会の運営に真摯に取り組んで参りますのでどうぞよろしくお願い申し上げます。
今年度は2016年に改正された法律の実施年度にあたります。
働き方改革の流れから、労働契約法の改定、雇用安定措置、同一労働同一賃金の推進と労働者派遣事業を取り巻く環境下で派遣元企業である私たちは、多くの課題に取組みつつ、許可事業者として、コンプライアンスを遵守し変化に順応していかなくてはなりません。以上の事からも引き続き、「派遣法・労働関係法規への対応」を昨年度以上に取組んで参ります。
労働市場はこれから先、様々な変化が、それも加速して進んでいくことが予想されます。私たちに必要とされるのは今まで以上の情報収集力とそれらを取捨選択をしながら派遣労働者の皆様に安心して働いていただけるよう、より一層の努力をしなくてはなりません。
中部地域協議会では、取組として、労働法規等々の改正のポイントや今後の流れなど、日本人材派遣協会との連携による最新情報等のリリースを、迅速かつ、的確に配信をと考えております。また、中部協地域議会ならではの派遣元企業間の情報交換等々を充実させていきたいと考えております。今秋の研修においては、若手中堅の社員の皆様に積極参加をいただけたらと存じます。
会員企業の皆様と共に、派遣業界の成長と、社会貢献の事業であるという認知向上に努め、協議会活動を盛り上げていきたいと思っておりますので、より一層のご理解とご協力をお願い申し上げます。
皆様と共に、成長できること、期待感を以て揚々と進めていけたらと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。
人材派遣業に於ける最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
全文を読む
日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。
2015年派遣法改正時には相談件数が大幅に増加しましたが、派遣会社からの相談件数を見ると2016年度、2017年度ともに改正前(2013年度、2014年度)に比べ件数は減少しています。
対象 | 2012年度(派遣法改正) | 2013年度 | 2014年度 | 2015年度(派遣法改正) | 2016年度 | 2017年度 |
---|---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 1,532 | 1,618 | 1,936 | 2,482 | 2,013 | 2,020 |
派遣会社 | 8,773 | 6,305 | 6,426 | 7,514 | 4,484 | 4,570 |
派遣先企業 | 507 | 489 | 526 | 473 | 298 | 336 |
その他 | 402 | 376 | 492 | 369 | 206 | 117 |
合計 | 11,214 | 8,788 | 9,380 | 10,837 | 7,001 | 7,103 |
最近の相談内容の傾向は、2015年派遣法改正から3年を経過することから「事業所単位の派遣期間制限」や「個人単位の派遣期間制限」について、また「雇用安定措置」や「キャリアアップ措置」について、派遣社員からも法的な質問や抵触日後の働き方に関するキャリア相談(無期雇用の転換を含む)をいただきます。
労働者派遣法を派遣労働者へ周知・啓発する際の資料
(厚生労働省のHP( http://www.mhlw.go.jp/)より、ダウンロードしてください。)
「有期雇用派遣から無期雇用派遣に変更すれば、これからも現在の派遣先で働けますよ、と派遣会社の担当から説明を受けました。今まで更新を続けて特に問題はありませんでしたが無期雇用に変更するメリットは何ですか?派遣会社にさらに説明を求めましたがよくわからなかったので教えてください。」
この場合、ご本人が引き続き働くことを希望しているなら、無期雇用転換についてご本人が納得するまで丁寧に説明することが必要ですが、抵触日を迎えるにあたっては雇用安定措置(「派遣先への直接雇用の依頼」や「新しい派遣先の提供」「派遣元での無期雇用」「その他、有給での教育訓練の機会をあたえる等、雇用の安定を図る措置」)について、派遣社員の今後のキャリア希望を踏まえて説明することが重要となります。
なお、労働関係法を派遣社員や派遣先企業に周知・啓発する資料として、厚生労働省で「冊子やパンフレット」を作成しておりますので、是非ともダウンロードしてご活用ください。
派遣契約、労働契約に関することが最も多く寄せられています。中でも契約書に記載された業務内容について、派遣先と解釈の相違がある場合の相談が最も多く、ここで齟齬が生じてしまっていると、後々の派遣就労に影響を及ぼし派遣社員や派遣先からの苦情となってしまいます。業務内容は派遣先としっかりと確認し、相互に納得して契約を結ぶことが大切です。
契約書に記載があるにもかかわらず派遣先から派遣社員の引き抜きが行われて困っているとの相談も多くあります。派遣先との取引関係を良好に継続していくため、契約締結時には、記載項目の趣旨をできる限り丁寧に説明し、派遣先に理解していただく必要があります。特に職業紹介手数料については、トラブルの原因となる可能性が高いので、契約書には必ず記載してください。
また「教育訓練」について具体的に何をしたらよいのか、との相談も寄せられます。日本人材派遣協会では、会員企業が派遣社員に適切な教育研修の機会提供を行うことを支援するため、派遣社員向けeラーニングサービス「JASSAキャリアガレッジ」(有料)や「教育訓練テキストと解説PDF」(無料)を会員サイトで提供しています。是非、協会ホームページをご確認ください。
派遣契約に記載しなければならない契約事項(中途解約、損害賠償の適切な措置、紛争防止措置)などの相談が多くあります。また直接雇用したいが手数料は必要か?もしくは手数料を払いたくないといった相談があります。
派遣を利用される派遣先企業に対しては、気持ちよくかつ適切に派遣を活用していただくためにも、日ごろから良好なコミュニケーションをとり、必要な労働関係法について正しく理解していただけるようしっかりと説明をしてください。
派遣事業の運営等について、困りごと・お問い合わせ等がございましたら下記の相談センターをぜひご活用くださいますようお願い申し上げます。
高﨑愛知労働局長を訪問
中部地域協議会
全文を読む
中部地域協議会からは、派遣労働者アンケート結果や、労働者派遣事業統計調査の資料から、最近の派遣労働市場についての情報提供及び意見交換を行いました。