地域のひろば(第30号)

地域のひろば(第30号)

平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第30号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。

人材派遣協会の動きと当協会の取り組み

一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏

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中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃よりひとかたならぬご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。

2020年に新型コロナウイルス感染症が本格的に拡大して以降、人材派遣業界を含む日本の経済界、そして社会全体で様々な苦労がありましたが、現在は社会経済活動が以前にも増して活性化する兆し見せております。今年は各地で4年ぶりに祭事や花火大会といったイベントが開催されるなど、コロナ禍以前の日常が戻ってきたことを肌で感じることができるようになってきました。一方、コロナが再び流行し始めているという報道もあるため、今後も決して気を緩めることなく、必要な対策を講じながらも、前を向いてポストコロナ時代における展望について語るべきときが来ている考えております。

さて、我が国の雇用・労働市場において特に大きな課題の一つが、人口減少と少子高齢化の加速です。政府の推計では、2050年までに人口が2,000万人減少し、全人口における65歳以上の高齢者の割合が4割に迫ると見込まれています。労働力人口が大幅に減少するなかで、持続的な成長を遂げるために不可欠なのが、生産性の飛躍的な向上です。そのためのカギとなるのが、教育研修機会の提供やキャリア形成支援によって、働く人々の潜在的な能力を引き出すことです。そのためには、働く人々が自身の将来に対する展望を持ち、必要な能力を開発し、幸せを感じながらいきいきと働くことができる環境を創り上げることが不可欠です。

これからの日本の雇用・労働市場において、特に重要になると考えられるのがリスキリングです。現在の労働市場では、事務職が全体の約20%を占めており、1,400万人を超える方が事務職に従事しています。一方、デジタル人材は慢性的に不足しており、DXの推進によって需要はさらに増加しています。三菱総研の調査によると、2030年には事務職が120万人過剰になり、反対に専門職は170万人不足すると見込まれています。このミスマッチを解消するための解決策が、リスキリングによるデジタル人材の育成です。人材のプロフェッショナルである我々は、働く人々が将来への展望を描くことを支援するキャリアコンサルティングや多様な働き方および就業機会の提供だけでなく、リスキリングによる成長産業への労働移行を担っていく必要があります。それによって人の可能性を高め、多くの人々が幸せを感じながらいきいきと働ける社会を実現することができます。

私も人材派遣協会の会長として、中部地域協議会の皆様と力を合わせながら、派遣社員のみならず会員各社の従業員の方々をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。

皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

労働者派遣事業の動向等について

愛知労働局需給調整事業部 部長 山下 保氏

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令和5年4月1日付けで、愛知労働局需給調整事業部長を拝命しました山下でございます。
日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方には、愛知労働局の業務運営、とりわけ労働者派遣事業の適正な事業運営にご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

さて、最近の愛知労働局管内の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響により、有効求人倍率は令和2年9月に1.02倍まで低下しましたが、令和2年12月以降、緩やかではありますが上昇し、令和5年7月の有効求人倍率は1.37倍と持ち直しの動きが広がりつつあります。しかしながら、一部の産業において改善の動きが弱まっており、引き続き注意する必要があると判断しているところです。
労働力人口の減少、人手不足の状況が続く中、労働者派遣事業並びに職業紹介事業の需要は今後も高まるものと想定されます。

令和4年度の愛知労働局における労働者派遣事業の指導監督状況ですが、1,454事業所(前年度比4.8%増加)について指導監督を実施し、文書指導を行った事業所数は1,038事業所(前年度比8.4%増加)でした。指導監督を実施した事業所の内訳は、派遣元事業所が1,211事業所(前年度比3.6%増加)、派遣先事業所が195事業所(前年度比97.0%増加)です。派遣先事業所については、実際に派遣労働者が就業する現場であり、法令の周知徹底と適正な派遣就業を確保する必要がありますので、年度当初から重点的に実施しました。
派遣先事業所に対する主な指導事項は「派遣先管理台帳の未作成、派遣労働者の就業状況に係る通知が適切に行われていない」、「派遣元に対し、あらかじめ、比較対象労働者の待遇等の情報を提供していない」などです。
派遣元事業所に対する主な指導事項は「労使協定に定めるべき事項を適正に定めていない」、「派遣先から比較対象労働者の待遇等の情報提供を受けずに労働者派遣契約を締結している」、「就業条件等の明示を行っていない」、「派遣元管理台帳が未作成」などです。
皆様方におかれましては、厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業の専門家として、派遣先事業所への適切なアドバイスをお願いいたします。
なお、令和4年度に指導監督を実施した中で、不備が多かった項目を中心に、「労働者派遣事業の適正化に向けたオンライン研修会」を11月17日にYouTubeを利用したライブ配信で開催を予定していますので是非参加、視聴をお願いします。

令和5年度の指導監督方針は、令和2年4月1日施行の派遣労働者の待遇改善(同一労働同一賃金)について、令和4年度の指導監督の結果を見ても、まだ制度の理解が十分とはいえず、同一労働同一賃金の遵守を一層徹底するため、労働基準監督署と連携し適切な制度運用がされるよう重点的に指導監督を実施します。
また、申告や情報提供等により把握した禁止業務への派遣、無許可派遣、いわゆる偽装請負等の違法事案については迅速に調査を行い、厳正な指導監督を実施します。悪質な法違反や、繰り返しの法違反、故意性が疑われる法違反等については、行政指導に留めることなく、行政処分や告発等を視野に入れた対応をしていきます。
さらに、労働者派遣契約の中途解除や不更新といった事案が発生した場合、適正な雇用安定措置の履行に向け取り組んでいきます。

また、会員企業の皆様方の中にも有料職業紹介事業の許可を取得している事業者が多数いらっしゃると思いますが、令和5年6月16日閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2023」(いわゆる骨太方針)において、医療・介護・保育分野における職業紹介について、有料職業紹介事業の適正化に向けた指導監督や事例周知を行うことになりました。「悪質な職業紹介事業者の排除」について集中指導監督に取り組み、転職勧奨やお祝い金規制に係る違反等については、厳正な指導監督を実施します。

最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆様方におかれましては、労働者派遣法並びに関係法令を十分にご承知いただき、派遣先事業所への適切な対応や派遣労働者には教育訓練・キャリアコンサルティングなどを通じて、派遣先、派遣労働者から信頼される派遣事業所を目指していただき、引き続き適正な事業運営に努めていただきますようお願い申し上げます。

成長分野へ労働移動を促進することへの我々の役割

中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏

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中部地域協議会は、主に中部圏8県に事務所を持つ派遣会社で構成され、2023年度の会員企業は84社でございます。各種関係機関・団体との情報交換や会員企業同士の交流、会員企業の社員向け研修などを通じて、派遣事業の健全な発展に寄与することを目的として運営しております。

2020年以来猛威を振るってきたコロナ禍も、この23年5月「5類」への移行に伴い、本格的に社会経済活動が再開されています。久しぶりに飲食店も賑わい、観光地では外国人の姿が多くみられます。一方で、一部の業種では、事業再開に伴う人手不足が深刻となっております。
これを裏付けるデータとして、この5月時点の中部経済連合会の調査では、景況判断は3期連続で改善され、また経営上課題については、「人手不足」が最も多く、特に非製造業では深刻となっております。
また、コロナ禍を機に働き方も変容し、派遣社員に求められるスキルも今まで以上に変化し、対応を求められております。派遣業界としても、お客様のニーズに素早く応えていくことが何よりも重要と考えております。
さて政府は、骨太の方針2023年において、三位一体の労働市場改革を行うとされています。
その内容は、 「一人一人が自らのキャリアを選択する時代となってきた中、職務ごとに要求されるスキルを明らかにすることで、労働者が自らの意思でリスキリングを行い、職務を選択できる制度に移行していくことが重要であり、内部労働市場と外部労働市場をシームレスにつなげ、労働者が自らの選択によって労働移動できるようにすることが急務である。」としています。
そして、キーワードは「リスキリングによる能力向上支援」、「個々の企業の実態に応じた職務給の導入」、「成長分野への労働移動の円滑化」となっています。
これは、まさに現在、我々派遣業界が実践し推進していることではないかと考えております。今後は「キャリアコンサルティング」「リスキリング」「マッチング」を一貫して支援するサービスをさらに充実させて、IT・デジタルなど成長分野への労働移動を促進することへの貢献が我々の役割と考えております。
そして、労働市場に参加しやすい環境を整えていくことも益々期待され、改正にあわせた対応に取り組むことで、こうした環境変化に素早く順応していく業界であると思います。
一方で、地域における派遣会社だけでは情報の浸透が困難な側面もございます。
協会サービスの利用促進や、地域ならではの情報を共有することで、会員企業のレベルアップを図り、業界全体が社会から評価いただけるよう誠実に取り組んでいくことで地域の活性化にお役に立てるよう努めてまいります。

中部地域協議会では、愛知労働局 需給調整事業部の方をお招きしての「コンプライアンス研修」、日本人材派遣協会とともに「派遣元責任者講習」の運営、また有識者にご登壇いただき、将来どういう世界になるか、何が必要になるか語っていただく「会員研修会」、また会員相互のコミュニケーションを図る「会員懇親会」や「ゴルフコンペ」など、さまざまなイベントを企画実施しております。
協議会未加入の会社におかれましては、加入の検討をお願いするとともに、オンラインなども活用することで一人でも多くの方に各種イベントに参加いただきたいと考えております。
最後に、日本人材派遣協会との連携を密にしながら、派遣社員の「キャリア形成支援」を一層進め、また行政当局との対話を続け「コンプライアンス遵守」を推進し、公正な待遇の確保や個別事案対応力強化を図り、業界の健全な発展に尽力し地域に貢献できるよう取り組んでまいります。

引き続き倍旧のご厚情を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

人材派遣業における最新の相談状況について

一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏

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日本人材派遣協会では、派遣に関するご相談にお応えする「相談センター」を設置しています。相談センターは、当協会の会員様はもちろん、どなたでもご利用することができます。2022年度の相談件数は4,521件となりました(別表参照)。
2020年度からは、コロナ禍で相談センターの体制を一時期Web相談のみとさせていただいたこともあり、相談件数が減少しましたが、2022年度からは徐々に相談件数は増加しています。

労働者派遣事業アドバイザー相談状況
対象 2018年度 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度
派遣社員 1,790 1,747 1,064 787 1,411
派遣会社 4,323 4,247 2,579 2,305 2,833
派遣先企業 363 297 159 98 156
その他 660 743 445 170 121
合計 7,136 7,034 4,247 3,360 4,521

最近の相談事例

派遣社員からの相談

【労働条件の相違】
労働条件の相違は、一年を通じて、派遣社員から多く寄せられる相談です。
「職場見学で説明された部署ではなく、業務内容も違うまま派遣就業の開始となったため、その場で派遣先責任者及びその部署の上司に相談したが、『職場見学で説明した部署と業務ではなくこちらでお願いします。』と言われた。派遣先が勝手に契約内容と異なる就業場所や業務内容に変更できるのか?」

派遣先が一方的に契約内容と異なる就業場所や業務内容に変更して、派遣社員に命じることはできません。
労働者派遣の場合、予め派遣元と派遣先との間で就業する部署や仕事内容等を確認したうえで、派遣契約を締結し、その内容をもとに派遣社員が就業することになるからです。また、派遣元は、派遣契約とは別に派遣社員と労働契約を締結しており、その内容のとおり就業することになります。
このような場合には、まず派遣元は、派遣先に経緯・理由等を確認し、派遣契約のとおりとなるよう求めなければなりません。それでも是正されなければ、派遣社員を保護するために、派遣元は派遣先に対して派遣契約を解除することができ (民法541条) 、派遣元は派遣先に対して損害賠償を請求することができます(民法415条)。
仮に是正がなされず、派遣契約を中途解除することになったとしても、派遣元と派遣社員との労働契約は存続しますので、派遣社員の新たな就業機会の確保、休業手当の支払い等の対応が必要です。
話し合いの上、契約内容を変更するのであれば、派遣元と派遣先は派遣契約、派遣元と派遣社員は労働契約をそれぞれ合意の上、変更する必要があります。

派遣元からの相談

60歳を迎える派遣社員についての相談も増えてきております。
【60歳を迎える派遣社員】
「個人単位の期間制限の3年を経過する前に派遣社員が60歳を迎えた場合、期間制限の例外要件に該当し、事業所単位の期間制限が延長していることから、その派遣社員は3年を超えて派遣就業が可能となった。派遣社員も継続して就業の希望があったが、派遣先から『3年到達時に、60歳になった派遣社員を交代してほしい』との要請があった。どのように対応したらよいか?」

派遣先が60歳という年齢を理由に、派遣社員を特定することはできません。
派遣法では、派遣先が年齢や性別に限定するなど派遣社員を特定することを目的とする行為が禁止されております。
派遣社員のスキル不足、勤怠不良、協調性がないなど確かな事実があって、何度是正しても改善されないのであれば変更は可能となりますが、年齢だけでは認められません。
このような場合は、派遣元は派遣社員の雇用の安定のために、派遣先と十分に話し合いをすることが重要です。なお、例えば派遣元と派遣社員の労働契約が継続しているにもかかわらず、派遣社員が就業できない場合は、新たな就業先を確保すること又は休業手当の責任が生じますので、注意が必要です。

【60歳を迎える無期雇用派遣社員】
「まもなく60歳に到達し定年を迎える無期雇用派遣社員に、就業先を紹介できずに休業手当を支給している。当社の規程では定年の時点で有期雇用に転換となり紹介できない場合の休業手当が対象外となるがいいか?いつまで雇用を継続する必要があるか?」

定年後の有期雇用派遣社員にも就業先を紹介できなければ休業手当が発生するため、対象外にすることはできません。
また、定年後の雇用について、高年齢者雇用安定法で義務化されている「65歳までの雇用確保措置」により、定年を60歳としている企業は、継続希望者全員を対象とする65歳までの継続雇用制度を設ける義務があります。本人が引き続き就業を希望すれば、雇用は継続となり、その際に仕事がなければ休業手当の対象となります。
なお、定年後の有期雇用契約の高齢者には、5年の無期転換ルールを適用しない特例が設けられています(都道府県労働局長の認定が必要)。また、法改正により現在は「70歳までの就業確保措置」が努力義務になっています。

派遣先からの相談

【職場見学時の質問】
「派遣元から紹介される人物にミスマッチが多いので、職場見学時に派遣先から派遣社員に質問して本人を見極めたいが可能か?」
職場見学は派遣社員が派遣先を訪問して、自ら業務内容や就業環境を確認する場であって、派遣先が派遣社員を見極め、選定するための場ではありません。
前述の年齢の特定と同様に、派遣先が派遣社員を事前面接等で選定する行為は、派遣社員を特定することを目的とする行為に該当し禁止されております。
ミスマッチを防ぐためには、派遣先は、派遣元との契約交渉の場で、具体的にどのような派遣社員を派遣してほしいのかをできる限り詳細に派遣元に伝え、すり合わせする必要があります。また、職場見学時の質問は、必要な業務能力を明確に説明した上で、それに該当するか否かを確認する目的の範囲内であって、派遣業務に関わる派遣社員の業務経験、知識、技術等に限られます。プライバシーや個人情報に関わる事項については、質問できません。
なお、就業後のトラブルを防ぐためにも特に業務内容については具体的に詳しく契約書に記載することをお勧めします。

何かご不明な点がございましたら、相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。

一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~19:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
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