地域のひろば(第28号)

地域のひろば(第28号)

平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第28号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。

人材派遣協会の動きと当協会の取り組み

一般社団法人日本人材派遣協会 会長 田﨑 博道氏

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中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃より格別のご支援とご理解を賜り、この場をお借りしまして厚く御礼申し上げます。

今夏は、新型コロナウイルスの猛威により医療体制が危機的な状況となる中で、さらに8月には中部地方も含む各地で発生した豪雨による被害も重なるなど、大変な苦難に直面いたしました。被害に遭われた皆様に心よりお見舞い申し上げるとともに、この難局を乗り切るため献身的に取り組まれておられる関係者の皆様に改めて感謝申し上げます。

このような難局においても、派遣会社の皆様が、派遣社員の雇用と安全の維持・確保に向けて全力で取り組んでこられていることに改めて敬意を表します。先日開催された厚生労働省幹部と人材サービス関連業界団体との意見交換においても、派遣業界の取組みに対して理解と評価をいただいております。

派遣協会では、2大中核事業の「コンプライアンス支援事業」と「キャリア形成支援事業」を、会員の皆様が派遣会社として社会の期待に応える事業活動を行う上での重要な支援策と位置づけており、本年度も一層強化しております。関連法令関係の最新情報の発信や支援ツールの提供など具体的で役に立つ支援策を拡充させるとともに、派遣社員の雇用機会創出に向けた取組みをサポートするため、会員企業の社員向けに「キャリア形成支援者の在り方を考えるワークショップ」を本年度より開催しております。既に多数の方に受講いただいき、ご評価の声をいただけていると感じております。

また、派遣業界の取組みが社会に広く理解していただけるように、広報活動も積極的に展開しております。本年度は新たに、有識者を招き、派遣業界を取り巻く環境変化や課題、今後の派遣事業の在り方などをテーマに講演いただく「JASSAフォーラム」をシリーズで開催することとしました。8月に「派遣労働者のキャリア形成と雇用安定措置」をテーマにオンラインで第1回を開催し、中部地域協議会の皆様をはじめ全国の多数の会員の皆様にもご参加いただいております。

わが国は、コロナ禍等による変化に留まらず社会構造全体が大きな変革期にあり、雇用システムも大きな転換期にあります。政府においては、派遣業界にも影響のある政策議論が進められております。このような時代において、派遣会社としてどのような役割を果たしていくのか、どのように対応していくのか問われております。派遣協会としては、この問題に日々真摯に取り組まれておられる会員の皆様に貢献できるよう、各地域協議会の皆様との連携を強化し、一歩先を行く想像力を働かせ取り組んでまいりたいと思います。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

労働者派遣事業の適正な運営に向けて

愛知労働局需給調整事業部長 大嶋 健二氏

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日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆さま方には、労働行政へのご理解とご協力を賜り、厚くお礼申し上げます。

さて、最近の愛知労働局管内の雇用情勢は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、令和2年12月には有効求人倍率が1倍を切り0.99倍まで低下しました。その後、徐々に上昇し、この6月には1.20倍と着実に改善しておりますが、引き続き注意する必要があると判断しているところです。

この間、愛知労働局需給調整事業部では、コロナ感染に係る派遣労働者の雇用維持のため、派遣元事業主に対して、昨年度は5回、今年度は5月に派遣労働者の雇用維持等に対する文書による要請を行いました。中部地域協議会の会員企業の皆さま方をはじめ、派遣元事業主の皆さまにおかれましては、必要な雇用安定措置への適切な対応や雇用調整助成金及び新型コロナウイルス感染症休業支援金・給付金等を活用した雇用維持にご尽力いただき感謝申し上げます。8月27日には今年度2度目の緊急事態宣言が愛知県に発令されるなど新型コロナウイルス感染症の終息に目途が立たない状況ではありますが、引き続き派遣労働者の雇用の安定のための対応をお願いいたします。

さて、こうした状況の中、労働者派遣法施行規則の一部を改正する省令が施行され、キャリアアップ措置や雇用安定措置等の派遣元の責務が強化されました。

強化された内容は、一点目は、令和3年1月1日から派遣労働者として雇用する労働者に対し、教育訓練やキャリアコンサルティングの内容について説明することが必要となったこと、二点目は、派遣元事業主は、労働者派遣が契約の解除がなされた場合、新たな就業先の確保ができない場合には、休業等を行い、日雇派遣労働者の雇用維持、休業手当の支払い等の労働基準法等に基づく責務を果たすべきことが明確化されたこと、三点目は、これまでも派遣元事業主は、派遣労働者の雇用安定措置を講じる必要がありましたが、令和3年4月1日より当該雇用安定措置を講じるにあたっては、予め派遣労働者から希望する措置の内容を聴取することが義務化され、派遣労働者から聴取した内容について派遣元管理台帳への記載が必要となったこと、四点目は、事業所毎の派遣労働者数、派遣先数、マージン率、教育訓練については、これまでも情報提供の対象項目でしたが、新たに労使協定の締結の有無が追加され、原則、インターネットの利用による情報提供が必要となったことです。

次に、令和2年4月1日に施行された派遣先の労働者と派遣労働者との間の不合理な待遇差を解消するため、派遣元事業主は派遣先均等・均衡方式、労使協定方式のいずれかの方式により、派遣労働者の待遇を確保することとなり、約9割の派遣元事業主が労使協定方式を取り入れています。この労使協定方式では、過半数代表者の選出方法が適切に選任されなかった場合には、派遣先均等・均衡方式による待遇を確保しなければならなくなりますので、過半数労働者が当該者の選任を指示していることが明確になる、民主的な手続きをお願いいたします。

また、今年度は、派遣労働者の雇用維持・確保を図ることを目的として、職種・地域ごとに一定の要件を満たし、労使で合意した場合に、平成30年度の統計調査等を用いることも可能とした例外的取扱いが示されました。この取扱いは、令和3年度限りの取扱いですのでご留意願います。

なお、令和4年度に適用される『令和4年度の「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第30条の4第1項第2号イに定める「同種の業務に従事する一般の労働者の平均的な賃金の額」」等について』が令和3年8月6日に発出されました。令和4年度の一般賃金等についてはこの通達を確認のうえ、適切な対応をお願いいたします。

次に、令和3年4月1日施行により、へき地の医療機関への看護師等の労働者派遣、社会福祉施設等への看護師の日雇派遣が可能となり、さらに、令和3年4月23日施行によりへき地以外のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣が可能となったところです。

へき地の医療機関への看護師等の労働者派遣については、各都道府県のへき地医療支援機関等による事前研修の実施、派遣先による事前研修終了の確認、教育訓練の実施がされたことを確認のうえ派遣していただきますようお願いいたします。

へき地以外のワクチン接種会場への看護師・准看護師の労働者派遣については、コロナワクチン接種を行うへき地以外の市町村が設置する特設会場、集団接種を行う医療機関等を含む病院又は診療所において、看護職員が行う診療補助行為等のうち予防接種に係るものに限られ、厚生労働大臣が指定する期間の令和4年2月28日までとなりますのでご留意をいただきますようお願いいたします。

最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆さま方におかれましては、新型コロナウイルス感染症には十分お気をつけいただき、引き続き、適正な事業運営に努めていただきますようお願いします。

多様化する派遣社員の働き方への取り組み

中部地域協議会 会長 丸山 恭一氏

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コロナ禍の下で、長く厳しい事業環境が続く中、派遣会社の皆さまにおいては、派遣社員の雇用と安全の維持・確保に取り組んでこられていることに改めて感謝申し上げます。
昨年来から新型コロナウイルスの感染状況も変異株による感染の広がりで第5波に襲われ、緊張感が高まるこの厳しい環境下において、皆さまのご努力で職種や業種で違いはあるものの、概ね派遣先企業の皆さまのご理解もいただき、派遣社員の雇用はなんとか持ちこたえられている状況でございます。

コロナ禍で当協議会の活動内容も一変いたしました。今年度の定時総会は、6月23日(水)名古屋市のウインク愛知で行いました。残念ながら会場参加は会長、副会長、幹事、監事会社のみとし、多くの会社様は委任状での出席による小規模開催となりました。今総会では、役員体制に変更があり、副会長3名が全員交代となりました。新しく、トヨタすまいるライフ(株)人材サービス部 部長 谷澤 由美子様、パーソルテンプスタッフ(株)執行役員 本部長 鈴木 博之様、(株)リクルートスタッフィング 東海ユニット長 小澤 一広様が就任されました。フレッシュな思考と幹事・監事、会員の皆さまに支えられながら活動を進めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

昨年は対面による行事は原則中止、代替としてオンラインによる活動となりました。定期幹事会も極力会場内の出席者を減らす努力をし、現在もハイブリッド方式での定期開催を行っております。
そして、研修会等はWebセミナーに切り替え3回開催し、オンラインのメリットを活かすことで、普段参加が難しい地域の方々や各社若手の方々の参加者が大幅に増え、毎回100名を超える規模で実施することができ好評をいただいております。また、実施後アンケートで会員各社の皆様からご意見、ご要望をいただきましたので、今年度はこのお声を活かせるよう努めてまいります。多くの方から、実務セミナーの要望もありましたので、今秋以降には行政の方をお迎えするWebセミナーの開催を予定しております。ぜひお気軽にご参加ください。一方で、ワクチン接種が進み、一定の感染収束をむかえましたら、リアルの研修会や懇親会が早急に会員の皆さまと実現できることを願っております。

さて、今年度は派遣法改正から2年目となり、同一労働同一賃金の新しい仕組みが定着し始めている時期にきております。一般社団法人日本人材派遣協会(以下、JASSA)では、派遣労働者の「同一労働同一賃金」をはじめとする派遣業務に関する各種資料を多く取り揃えておりますので、会員の皆さまは今一度ご確認、ご活用いただき、まだ会員ではない会社様にはこの機会にご入会のご検討をいただければと思います。さらに今年度よりJASSAの新しい取り組みとして、労働市場や労働法制に関する有識者や実務の専門家の方を講師にお迎えし「JASSAフォーラム」という、派遣事業運営に資する最新情報をお届けする会員様向けWebセミナーを複数回開催予定にしておりますので、ご参加いただきたく存じます。そしてJASSAの2大中核事業である「コンプライアンス支援事業」と「キャリア形成支援事業」は、JASSAが会員の皆様に対する支援策として、重要性がより増しているものと考えており、当協会もJASSAと一層連携を深め、JASSAキャリアカレッジ、JASSAリーガルテストを地域の皆様へも推進してまいりたく存じます。

最後に、コロナ禍においては予測できない出来事の中で、更なる新しい働き方が求められています。この転換期において、当協議会では派遣会社として、お客様である派遣先企業の就業環境の変化に対応し、派遣社員の新しい働き方にふさわしいスキルや能力開発、キャリア形成支援を行い、派遣事業を通じ、労働力需給調整の社会的役割を果たし、ひとりでも多くの方に多様な働き方の提供や機会の創出、そしてキャリア形成支援を通じ雇用の安定を図ることに努め、業界の健全な発展に尽力してまいりたく存じますので引き続きよろしくお願いいたします。

人材派遣業に於ける最新の相談状況について

一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏

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日本人材派遣協会では、派遣に関する相談についてお応えする「相談センター」を設置しております。会員企業の皆様はもちろん、どなたでもご利用いただけます。

2020年度は、新型コロナウィルス感染拡大防止のため緊急事態宣言期間中はメール相談のみとさせていただいたこともあり、相談件数は2019年度の7,034件から減少し、4,247件となっています(別表参照)。

労働者派遣事業アドバイザー相談状況
対象 2016年度 2017年度 2018年度 2019年度 2020年度
派遣社員 2,013 2,020 1,790 1,747 1,064
派遣会社 4,484 4,570 4,323 4,247 2,579
派遣先企業 298 336 363 297 159
その他 206 117 660 743 445
合計 7,001 7,103 7,136 7,034 4,247

最近の相談(よくある相談)

【派遣社員からの相談】

●就業条件の相違

「就業条件が違っている(話が違う)」という相談は常に多く寄せられております。

派遣社員との間で、「言った」「言わない」の水掛け論となるケースが多いものです。就業条件は、口頭で伝えるだけではなく、書面(メールを含む)を残すことがトラブル回避となります。

なお、募集時と採用時で就業条件が違っても、お互いが合意し、労働者が内容を了解していれば違法ではありません(厚生労働省)。最終合意内容が、両当事者の合意ということになります。

あとから苦情が出ないように、就業条件の内容は、派遣社員が理解、納得できるまで十分に説明し、書面で合意内容を残しておくことをお勧めします。

【派遣元からの相談】

●雇用安定措置

雇用安定措置の相談では、派遣法30条1項の第1号により派遣先に直接雇用の依頼をしてみたが、派遣先から断られ、次に第2号による新たな派遣先を紹介したものの、派遣社員から拒否されたというご相談が少なくありません。派遣社員の希望も考慮しながら「合理的な範囲」の派遣先を紹介したものの、何件紹介しても本人から「希望条件に合わない」と拒否されてしまうというものです。

新たな派遣先を紹介する時には、派遣会社だけの判断で合理的か否かを決めるのではなく、派遣社員が希望する就業条件を事前に確認し、すり合わせをしておくことが大切です。3年を迎える前に、余裕をもって派遣社員に寄り添ってその希望や環境についてヒアリングを重ねていただければと思います。そのためには、日頃から、派遣社員とは上手くコミュニケーションをとり、ニーズに即したマッチングができるよう慎重な対応をお勧めします。

●コロナ禍での就業環境の改善

派遣社員が「緊急事態宣言中はコロナが怖いので通勤したくない」、また「就業中の派遣先で、コロナ罹患者が連続で発生していて、対応が整うまで職場では怖くて働くことができない」等の不安を伝えられ、出勤を拒否する、派遣就業を辞めたいとの申し出があるなどのケースも生じています。

そのような場合は、派遣先でテレワークを取り入れているのであれば派遣社員にも同様に利用できるようにお願いするのがよいでしょう。業務の都合上、フルタイムでのテレワークが難しいときは、週に数日だけでもお願いできないか、または、時差出勤に対応いただくことはできないか等も考えられます。このように職場環境の具体的な改善を派遣先にお願いし、その結果を派遣社員に説明し、納得して就業していただくような対応が求められます。

なお、テレワークへと切り替える場合、就業条件に変更が生じますので、派遣社員とも十分に話し合い、今一度契約内容を見直す必要があります。
派遣協会では、「派遣社員の在宅勤務導入に当たっての留意点」のリーフレットや覚書の雛型をご用意しておりますので、是非ご活用ください。

●派遣社員の待遇決定 

8月6日付の職業安定局長通達、職業安定業務統計(通達内の別添2「職業安定業務統計の求人賃金を基準値とした一般基本給・賞与等の額(時給換算)」)では、いくつかの職種において基準値が「-」と表示されていますが、求人件数が30件未満の職業は「-」と表示とされています。

この「-」と記された職種については「昨年の数値を使うことはできません」(東京労働局見解)。
どの数字を利用するかは、労使で話し合いをすることを前提に、以下の対応をしていただくことになります。

  1. 小分類を中分類にあげて数値をとる。
  2. 別のデータを使う 賃金構造基本統計(別添1 令和2年賃金構造統計調査による職種別平均賃金(時給換算))

上記の1、2を選択した場合、労使協定の中に、今回その職種を別の取り扱いにしたことについて記載する必要があります。例:「●●職種について令和2年職業安定統計に数値が示されていないため」等。

当協会では、「相談センター」を設置して、労働者派遣事業アドバイザーが、派遣法をはじめとした派遣にまつわるご相談に応じています。
なお、相談センター所在地の東京都で緊急事態宣言中・まん延防止等重点措置発令中は、誠に勝手ながらお電話での対応は休止とさせていただいており、当協会ホームページのトップページ「相談センター/キャリアカウンセリング」からの「お問い合わせフォーム」にてご相談に応じています。

一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター