平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第32号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。
人材派遣協会の動きと当協会の取り組み
一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏
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中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃よりひとかたならぬご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。
近年、日本の労働市場では、人口減少と少子高齢化の加速、働き方改革の進展、コロナ禍による働き方の変容、DXの重要性の高まり、そして、生成AIの急速な進化といった、これまでになく大きな変化が数多く起こっており、大きな変革期を迎えていると言えます。
特に、人口減少と少子高齢化の加速は、我が国においてもっとも大きな課題のひとつであると同時に、もっとも解決が難しい課題のひとつでもあります。日本の総人口は長期の人口減少過程に入っており、2053年には1億人を割ると推計されています。労働力人口も同じく減少が見込まれており、2022年の 6902万人から、2040年には6002万人となる可能性があると言われています。メディアで「人手不足」という言葉を目にしない日はなく、事業に必要な人材の獲得や定着を課題とする企業が増え続けています。
一方、派遣社員をはじめとする働き手においては、生成AIの加速度的な進歩も相まって先を見通すことがこれまで以上に難しくなるなか、キャリア形成や能力開発に関する意識が大きく高まっています。キャリアの自律を目指し、主体的なキャリア開発に取り組む人材も増えています。こうした潮流は、さらなる生産性の向上が不可欠とされる我が国において、歓迎すべき動きであると言えます。
このような状況において、我々人材派遣業界では、派遣社員のリスキリングと、成長分野への人材の労働移動をさらに強化する必要があると考えています。リスキリングを通じて派遣社員の能力開発を支援し、デジタルをはじめとする成長分野での仕事とのマッチングによって、人材のキャリア形成と企業の業績向上につなげることは、我々だからこそ実現可能なサイクルです。この循環を促進することにより、雇用・労働市場における課題解決を推進するだけでなく、日本全体の持続的な成長にも寄与することができます。
人材のプロフェッショナルである我々は、働く人々がキャリアを含め自身の将来に対する展望を持ち、必要なスキルを身に付け、幸せを感じながらいきいきと働ける社会を構築することを目指しています。一般社団法人日本人材派遣協会は、あらゆるステークホルダーの皆様と協力・連携しながら、この目標の実現に向かって、一丸となって取り組んでまいります。
私も人材派遣協会の会長として、中部地域協議会の皆様と力を合わせながら、派遣社員のみならず会員各社の従業員の方々をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。
皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
労働者派遣事業の適正な事業運営に向けて
愛知労働局需給調整事業部 部長 奥村 孝治氏
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日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方におかれましては、愛知労働局の業務運営、とりわけ労働者派遣事業の適正な事業運営に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。
愛知の労働行政を取り巻く情勢から、愛知労働局では、今年度3つの柱に基づき施策に取り組むこととしております。
1つ目は、「最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援・非正規雇用労働者への支援」です。物価上昇に対して賃金上昇が十分に追いついていない状況が続いていることから、物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現に向けて、生産性向上に取り組む中小企業への支援等、中小企業・小規模事業者が賃上げしやすい環境整備に取り組むこととしております。
2つ目は、「人材確保支援、リ・スキリングの推進」です。多くの企業で人材確保が困難な状況が継続し、特に中小企業の人手不足感が深刻化していることから、マッチング機能の強化を中心とした人材確保の支援に取り組むとともに、労働者個々人の学び直しに対応するためのリ・スキリングによる能力向上支援に取り組むこととしております。
3つ目は、「多様な人材の活躍促進と職場環境改善に向けた取組」です。生産年齢人口の減少が急速に進行する中、年齢や性別等にかかわりなく、多様な人材が活躍できる社会を実現することが重要であることから、誰もが安心して、かつ安全に働き続け、その能力・経験を十分に発揮することができる職場環境の実現に取り組むこととしております。
引き続き、業務運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
さて、労働者派遣事業関係では、令和6年度の指導監督状況は、指導監督を実施した事業所は1,547事業所で、令和5年度より4.2%増加となっております。そのうち、文書指導を実施した事業所は1,026事業所で、令和5年度に比べ2.4%減少となっております。
指導監督を実施した事業所の内訳は、派遣元事業所が1,100事業所、派遣先事業所が403事業所となっており、令和5年度に比べ派遣元事業所が8.1%の減少、派遣先事業所が50.9%の増加となっております。
派遣先事業所の増加については、実際に派遣労働者が就業する現場であることから、法令の周知徹底と適正な派遣就業を確保することから重点的に行ったことによるものです。
派遣元事業所に対する主な指導事項は、「労使協定に必要な記載事項を適正に定めていない。」、「派遣契約締結の都度、比較対象労働者の待遇等の情報提供を受けていない。」、「就業条件明示書や派遣元管理台帳の法定項目が漏れている。」となっており、また、派遣先事業所に対する主な指導事項は、「派遣先管理台帳に不備がある。」、「派遣契約締結に当たり、比較対象労働者の待遇等の情報を提供していない。」、「派遣契約締結に当たり、抵触日の通知を行っていない。」となっております。
例年、同様な事項が主な指導事項となっており、派遣元事業所の皆様は、これらの事項の確認をしていただくとともに、厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業の専門家として、派遣先事業所への適切なアドバイスもお願いいたします。
令和7年度の労働者派遣事業関係の指導監督方針としましては、平成30年改正労働者派遣法により、派遣労働者と派遣先に雇用される通常の労働者との間で不合理な待遇差が生じないよう、派遣元事業主は、公正な待遇を確保するための措置を講ずることとされているため、昨年度に引き続き、労働基準監督署とも連携して派遣労働者の同一労働同一賃金の履行確保に向けた指導監督を実施することとしております。
また、派遣労働者を禁止業務に従事させる事案、無許可事業主から労働者派遣の役務の提供を受ける事案やいわゆる偽装請負等の問題が認められる事案については、速やかな是正指導を図るとともに、重大な法違反には行政処分を含め厳正に対処することとしております。
なお、労働者派遣契約の中途解除や不更新の事案が生じた場合、労働者派遣法に基づき、同一の派遣先における雇用安定措置の義務等を果たすよう、厳正な指導監督に取り組む等、派遣労働者の雇用維持のための指導等を実施することとしております。
需給調整事業部では、引き続き、派遣元事業主、派遣先、派遣労働者に対し必要な助言・指導を行ってまいりますので、貴協議会並びに会員の皆様方には、労働者派遣事業の適正な運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。
変化を力に―派遣業界の使命と地域への責任
中部地域協議会 会長 志村 聡子氏
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日頃より中部地域協議会の活動に温かいご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。
2025年も折り返しを迎え、社会や経済の変化が身近な場面でも感じられるようになってきました。AIやデジタル技術の活用が広がる中で、働き方や必要とされるスキルは少しずつ新しい方向へと移り変わっています。一方で、日本全体では人口減少に伴う人手不足がますます深刻になっており、「労働力不足」と「スキル変化」という二つの課題が同時に進行する状況にあります。このような中で、企業と人材をつなぐ派遣業界の役割は一層重要になっていると感じています。
現在、「同一労働同一賃金」制度の施行から5年を迎え見直し議論が始まっています。労働政策審議会では、派遣社員と正社員との待遇差をどう是正するか、福利厚生や諸手当をどのように取り扱うかといった具体的なテーマが話し合われています。派遣社員の方々が納得して働ける環境を整えることは、業界に対する社会の信頼をさらに高めるためにも欠かせません。私たちも制度の動向を注視しながら、丁寧な対応を重ねてまいります。
また、物価や人件費の上昇を背景にした、派遣料金の適正化も避けて通れない課題となっています。実際の交渉の場面では難しさを感じられることもあるかと思いますが、派遣サービスは「単なるコスト」ではなく、「人材という価値を通じて企業を支える仕組み」です。派遣先企業と誠実に対話を重ね、現場の実態に即した条件を築くことが、派遣社員の処遇改善につながり、業界全体の持続可能性を守ることにもなります。当協議会としても、日本人材派遣協会と連携しながら、会員の皆さまがより前向きに対話を進められるよう支援を続けてまいります。
法令遵守や実務力の向上も業界の信頼を支えるために欠かせません。当協議会ではこれまで、労働局と連携したコンプライアンス研修、日本人材派遣協会による派遣元責任者講習への支援、有識者を招いた会員研修会などを実施してまいりました。これらの活動は、会員企業の皆さまが安心して事業を進められる基盤づくりに少しでも役立てれば、との思いから続けてきたものです。今後も内容を充実させるとともに、会員企業同士が交流し、情報を共有できる機会を大切にしていきたいと考えております。
未来の働き方は変化の途上にありますが、その変化は新しい可能性でもあります。私たちは会員企業の皆さまと力を合わせ、挑戦と成長を積み重ねながら、より良い派遣業界、そして持続可能な地域社会の実現に向けて取り組んでまいります。。
今後とも、中部地域協議会への変わらぬご理解とご支援を賜りますよう、心よりお願い申し上げます。
人材派遣業における最新の相談状況について
一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏
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日本人材派遣協会では、会員企業をはじめ広くご利用いただける派遣に関する相談窓口を設けております。2025年9月から、法律相談が中心であることをより明確にするため、名称を「相談センター」から「派遣に関する法律相談センター」に改めました。当センターは、主に労働者派遣法をはじめ、派遣に関する法制度や実務に関するご相談をお受けしております。2024年度の相談件数は4,543件で前年並みとなり、ここ3年間はおおむね4,500件程度で推移しています(別表参照)。
対象 | 2020年度 | 2021年度 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 |
---|---|---|---|---|---|
派遣社員 | 1,064 | 787 | 1,411 | 1,511 | 1,379 |
派遣会社 | 2,579 | 2,305 | 2,833 | 2,772 | 2,847 |
派遣先企業 | 159 | 98 | 156 | 137 | 185 |
その他 | 445 | 170 | 121 | 98 | 132 |
合計 | 4,247 | 3,360 | 4,521 | 4,518 | 4,543 |
派遣社員からの相談
派遣社員からの相談は、ここ数年変わらず 「業務内容や労働条件の相違」や「休業手当」 に関するものが多く寄せられています。
例えば、募集時の記載の条件に関して、その後の職場見学時に派遣先も交えて契約の条件を確認したにも関わらず、実際に届いた就業条件明示書の記載内容が異なり、「そもそもこの条件であれば契約しなかった」との声がありました。条件の相違には、勤務日数や労働時間(開始・終了時刻)、部署の変更など、さまざまなケースがありますので、契約の締結にあたっては、本人が内容を理解・納得したうえで行われることが重要です。
また、休業手当に関しては、地域のひろば31号でも触れましたが、派遣契約期間の短縮により自宅待機を命じられた場合の賃金支給についての相談が寄せられていました。
【特定行為の禁止 正しい職場見学を】
職場見学の場で不適切な対応がなされる例もよくある相談です。
派遣先による派遣社員を特定することを目的とする行為は禁止されています(紹介予定派遣を除く)。
実際の相談では、派遣先から職場見学の際に「前職はどこか」「どの部署で働いていたか」といった質問を受けた、また、営業担当者が派遣社員本人に代わって個人情報を回答してしまったケースが寄せられています。
本来の職場見学は、派遣社員が自ら就業の可否を判断するために、業務内容の説明を受けたり、職場や休憩室・更衣室などの福利厚生施設を確認したりする場です。これに対し、派遣先が、その場で当該派遣社員を指定する、試験結果の合否で決める、あるいは出身校や結婚予定など就業に直接関係のない質問をして受入れの判断にすることは「特定行為」にあたります。職場見学を面接のように扱うことのないよう、派遣先・派遣元双方で十分に注意する必要があります。
特定行為の禁止について、協会HP「派遣先のみなさまへ」にリーフレットや動画で分かりやすく説明をしています。ぜひご活用ください。
派遣元からの相談
【無期転換した無期雇用派遣社員の労働契約】
最近の派遣元から寄せられる相談の中には、無期雇用派遣社員に関する相談も少なくありません。特に、派遣先での契約が終了した後の取り扱いをめぐって、認識のずれが生じ退職に至る事例が見られます。
例えば、派遣先との契約が終了した後、派遣元が新しい仕事を適切な条件で紹介したものの、本人が「条件に合わない」と断るケースがあります。就業規則や契約書に定められた範囲内であれば、無期雇用社員は会社の指示に従い就業しなければならず、紹介した仕事を断ると業務命令に従わないものとして取り扱われる場合があります。
ただし、職種や勤務地を限定している契約であれば、もちろんその範囲外の配属は命じることはできません。また、原則、労働条件が本人にとって不利益が及ぶ場合も本人の合意が必要です。無期転換時に労働条件を十分に説明していないと、誤解が生じやすくなります。
一方で、無期雇用派遣社員から退職の申出があった場合の取り扱いも課題です。就業規則に「1か月前までに申出」と規定していても、やむを得ない事情がある時は、一般的には民法上、2週間前の申出で足りるとされています。
このように、無期雇用派遣社員の労働契約をめぐる対応において、派遣元は、無期転換時の労働条件の説明を徹底し、誤解が生じないよう丁寧に対応することが重要です。
【育休明け無期雇用派遣社員の復職対応】
育休明けの無期雇用派遣社員の復職をめぐっても、派遣元からの相談が寄せられています。例えば、元の派遣先に戻れず、適切な労働条件の派遣先が見つからないときは、休業手当の支払いが必要となります。そのうえで、無期雇用派遣社員と条件のすり合わせを行い、業務内容や勤務地、労働時間を柔軟に検討することが現実的です。育休明けの復職対応は、労使双方の事情を丁寧に調整し、誤解や不利益が生じないよう進めることがとても重要です。
日本人材派遣協会・会員サイトでは、相談事例をベースに、会員企業の皆様(特に営業担当の皆様)が知っておくべき内容を1-2分の動画にてご紹介しています。また、派遣法をはじめとした法解説のページ、法改正解説動画も充実しておりますので是非ともご覧ください。
「日本人材派遣協会会員サイト」https://www.jassa.or.jp/member/
派遣先からの相談
【事業所単位での抵触日の考え方と管理上の留意点】
派遣先からは、事業所単位の抵触日の考え方に関する相談が寄せられています。
例えば本社で既に派遣を受け入れており、その後に複数の支社でも受け入れる場合、抵触日は雇用保険の適用事業所を基準とします。本社が最初に派遣を受け入れていれば、その日から3年後が抵触日です。支社が独立した適用事業所であれば、それぞれに個別の抵触日が発生しますが、本社に包括される支社(適用事業所でない)の場合は本社と同一日となります。なお、雇用保険の適用事業所であるか否かは、実態に即して判断されることとされておりますので、判断基準である独立性や持続性の判断にあたり、ご不明な点がある場合は、管轄の都道府県労働局需給調整事業担当課室にご相談いただくことも可能です。
派遣先のみなさまにぜひご理解いただきたい内容をまとめたページ「派遣先のみなさまへ」も併せてご覧いただけましたら幸いです。
「日本人材派遣協会ホームページ」https://www.jassa.or.jp/know/dispatcher/
ご不明な点がございましたら、派遣に関する法律相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。
一般社団法人日本人材派遣協会 派遣に関する法律相談センター
9:30~18:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
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