月別アーカイブ 10月 2024

地域のひろば(第31号)

平素は地域協議会の活動にご理解いただきありがとうございます。
今年度の「地域のひろば(第31号)」を作成いたしましたので以下にお届けいたします。
今後ともよろしくお願いいたします。

人材派遣協会の動きと当協会の取り組み

一般社団法人日本人材派遣協会 会長 川崎 健一郎氏

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中部地域協議会の皆様には、派遣協会の活動及び運営につきまして、日頃よりひとかたならぬご支援とご協力を賜り、この場をお借りしまして心より御礼申し上げます。

令和6年能登半島地震では、中部協議会の会員企業の皆様や関係者の方々の中にも地震の影響を受けた方がいらっしゃると聞き、ご苦労はいかばかりかと拝察いたします。被災された皆様に心からお見舞いを申し上げるとともに、復興に向けてご尽力されている方々に深く敬意を表します。

そうした困難もありながら、一方ではコロナ禍以前の日常が戻り、ようやくポストコロナ時代の展望について語ることができるときを迎えました。先日閉幕した「パリ2024オリンピック・パラリンピック」では競技場に観客が詰めかけ、本来の熱気に包まれた大会となりました。日本選手団はオリンピックで過去最高となる45個のメダルを、パラリンピックでは前回の東京大会を超える14個の金メダルを獲得し、アスリートの活躍に勇気づけられた方も多いのではないのでしょうか。

近年の日本の労働市場では、人口減少と少子高齢化の加速、働き方改革の進展、コロナ禍を経ての働き方の変容、DXの重要性の高まり、そして生成AIの急速な進化といった、これまでになく大きく激しい変化が数多く起こっており、ひとつの変革期を迎えていると言っていいでしょう。

特に、人口減少と少子高齢化の加速、また、それにともなう労働力人口の減少は、我が国においてもっとも大きな課題のひとつであると同時に、もっとも解決が難しい課題のひとつでもあります。メディアで「人手不足」という言葉を目にしない日はないほどであり、多くの企業が事業に必要な人材の獲得や定着を実現するため模索しています。

一方、働き手である派遣社員側に目を向けると、テクノロジーの進展も相まって、スキルの需給ギャップが大きな課題となっています。現在、およそ8割の派遣社員が事務職として勤務していますが、三菱総研の試算によると、国内の労働需給バランスは2030年に事務系の人材が120万人過剰となるのに対し、デジタルをはじめとする専門職の人材は170万人不足すると見られています。

このような状況において、我々人材派遣業界では、派遣社員のリスキリングと、成長分野への人材の労働移動をさらに強化する必要があると考えています。リスキリングによって派遣社員の能力開発を支援し、デジタルをはじめとする成長分野での仕事をマッチングすることで、キャリア形成と企業の業績向上につなげることは、我々だからこそ実現可能なサイクルです。雇用・労働市場における課題解決を推進するだけでなく、日本全体の持続的な成長にも寄与することができます。

人材のプロフェッショナルである我々は、企業が持続的な成長を果たすとともに、働く人々が自身の将来に対する展望を持ち、幸せを感じながらいきいきと働くことができる社会を構築することを目指しています。
一般社団法人日本人材派遣協会は、あらゆるステークホルダーの皆様と協力・連携しながら、この目標の実現に向かって、一丸となって取り組んでまいります。

私も人材派遣協会の会長として、中部地域協議会の皆様と力を合わせながら、派遣社員のみならず会員各社の従業員の方々をしっかりと支え、より良い未来を実現するために取り組んでまいります。

皆様の益々のご発展をお祈りし、引き続き、倍旧のご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

労働者派遣事業の動向等について

愛知労働局需給調整事業部 部長 山下 保氏

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日本人材派遣協会中部地域協議会並びに会員の皆様方におかれましては、愛知労働局の業務運営、とりわけ労働者派遣事業の適正な事業運営に格別のご理解とご協力を賜り、厚く御礼申し上げます。

愛知の労働行政を取り巻く情勢は、新型コロナウイルス感染症の影響を受け、有効求人倍率は令和2年9月に1.02倍まで低下しましたが、令和3年以降は、基幹産業である製造業を中心に生産回復の動きがみられ、直近の令和6年7月では1.26倍まで回復するなど、経済活動が本格的に動き始めています。
社会全体のマインドも従業員の雇用維持から、人材育成やリスキリングによるスキルアップといった「人への投資」に向かう流れに変化してきており、構造的な賃上げの実現と人材活性化に向けた労働市場の強化を目指す必要があります。
このような情勢の中、愛知労働局では重点課題として、「最低賃金・賃金の引き上げに向けた支援、非正規雇用労働者の処遇改善」、「リスキリング、労働移動の円滑化等の推進」及び「多様な人材の活躍と魅力ある職場づくり・就職支援」に取り組んでおります。引き続き業務運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

さて、愛知労働局における労働者派遣事業の指導監督状況ですが、令和5年度は、前年度比2.1%増加の1,485事業所について指導監督を実施し、そのうち文書指導を行った事業所数は前年度比1.3%増加の1,051事業所でした。なお、指導監督を実施した事業所の内訳は、派遣元事業所が1,197事業所、派遣先事業所が267事業所です。派遣先事業所については、実際に派遣労働者が就業する現場であり、法令の周知徹底と適正な派遣就業を確保する必要がありますので、年度当初から重点的に実施しました。
派遣元事業所に対する主な指導事項は「労使協定の締結(労働者派遣法第30条の4第1項)」、「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供がない場合の派遣契約締結の禁止(労働者派遣法第26条第9項)」、「就業条件等の明示(労働者派遣法第34条第1項)」、「派遣元管理台帳(労働者派法第37条第1項)」などです。
派遣先事業所に対する主な指導事項は「比較対象労働者の待遇等に関する情報提供(労働者派遣法第26条第7項)」、「派遣先管理台帳(派遣労働者の就業状況の記録)(労働者派遣法第42条)」、「抵触日の通知(労働者派遣法第26条第4項)」などです。
皆様におかれましては、厚生労働大臣の許可を受けた労働者派遣事業の専門家として、派遣先事業所への適切なアドバイスをお願いいたします。

令和6年度の指導監督方針は、令和2年4月1日施行の派遣労働者の待遇改善(いわゆる同一労働同一賃金)について、同一労働同一賃金の遵守を一層徹底するため、労働基準監督署と連携し適切な制度運用がされるよう重点的に指導監督を実施します。
また、申告や情報提供等により把握した禁止業務への派遣、無許可派遣、いわゆる偽装請負等の違法事案については迅速に調査を行い、厳正な指導監督を実施します。悪質な法違反や、繰り返しの法違反、故意性が疑われる法違反等については、行政指導に留めることなく、行政処分や告発等を視野に入れた対応をしていきます。
労働者派遣契約の中途解除や不更新といった事案が発生した場合、適正な雇用安定措置の履行に向け取り組んでまいります。

会員企業の皆様方の中にも有料職業紹介事業の許可を取得している事業者が多数いらっしゃると思いますが、令和6年4月1日施行の改正職業安定法施行規則により、求職者等に明示する労働条件内容が追加されたこと等、職業紹介事業に係る制度についてあらゆる機会を捉えて周知徹底を図って参ります。
また、医療・介護等職業紹介事業者に対する求人者からの就職者の短期離職及び手数料に関するトラブル等の苦情相談については、令和5年2月から「医療・介護・保育求人者向け特別相談窓口」を設置しており、丁寧な相談対応に務めるとともに、法違反が疑われる事案を把握した場合は、速やかに指導監督を実施して参ります。

最後になりますが、貴協議会並びに会員の皆様方には、労働者派遣法や関係法令を十分にご承知いただき、引き続き労働者派遣事業の適正な運営にご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げます。

成長分野へ労働移動を促進することへの我々の役割

中部地域協議会 会長 志村 聡子氏

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先般、日本人材派遣協会・中部地域協議会定時総会において、あらたに会長職を拝命いたしました志村聡子でございます。日頃は中部地域協議会の運営にご理解とご協力を賜り、心より御礼申し上げます。

2024年も早いもので9月を迎えました。この4月以降は労働条件通知書の明示事項の追加や、特定業種での時間外労働の上限規制適用拡大、障がい者法定雇用率引き上げ、社会保険の適用拡大等、労働環境の透明性と安全性のより一層の強化、また多様な働き方を支援する制度整備への対応にご尽力されてきたことと思います。また、昨今の物価上昇に伴う賃金引き上げの要請に応じるため、派遣料金の適正化を進め、派遣社員の労働条件を守るために様々なご苦労があったかと存じます。中部地域協議会の会員企業の皆さまが、派遣社員の雇用維持と安全確保、待遇改善に向けて日々ご尽力いただいていることに、心より感謝申し上げます。

労働市場の改革が本格的に進められており、ご承知の通り「三位一体の労働市場改革」がその中心に位置しています。「リ・スキリングによる能力向上支援」「職務給の導入」「労働移動の円滑化」の3つの柱は、まさに私たち派遣業界が従前より進めている施策と一致するものです。今後も派遣社員が自らのキャリアを選択し、成長できる環境を整えることが求められていると感じます。

今年度に入り、東海地方の有効求人倍率は緩やかな下降傾向にあるものの、7月の就業地別有効求人倍率は1.31倍と全国平均1.24倍を上回っています。有効求職者は毎月10万人前後いらっしゃるものの、引き続き人手不足感は否めない状況です。職種別では建設業や介護、IT分野などの専門職の求人倍率が高く、逆に事務職の求人倍率は0.44倍と人気が集中していることが伺えます。求職者の希望と市場需要のミスマッチは解消されておらず、バランスの取れた労働力の供給が課題となっています。

私たち中部地域協議会では、こうした法改正や労働市場の変化に対応するため、引き続き、会員企業の皆さまが必要な情報を提供し、研修や講習を通じて支援してまいります。具体的には、愛知労働局さまとの連携による「コンプライアンス研修」、日本人材派遣協会と共に実施する「派遣元責任者講習」、さらには有識者を招いた「会員研修会」など、さまざまな研修やイベントを開催いたします。これらの取り組みを通じて、会員企業のレベルアップと業界全体の発展を目指しています。また、会員間のコミュニケーションを深めるための「懇親会」や「ゴルフコンペ」なども実施し、地域に密着した情報交換の場を提供してまいります。
また、日本人材派遣協会との連携を密にし、中部地域の現状と会員各社さまの要望を伝える活動も引き続き行ってまいります。

協議会未加入の会社におかれましては、加入の検討をお願いするとともに、一人でも多くの方に各種イベントに参加いただきたいと考えております。

今後も、派遣社員のキャリア形成を支援し、IT・デジタルなどの成長分野への労働移動を促進することが、私たちの重要な役割であると考えています。会員企業同士の連携を強化し、業界全体の健全な発展を目指し、地域社会に貢献できるよう取り組んでまいります。

皆さまの引き続きのご支援を賜りますよう、何卒よろしくお願い申し上げます。

人材派遣業における最新の相談状況について

一般社団法人日本人材派遣協会 事業推進グループ 長尾 明子氏

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日本人材派遣協会では、当協会の会員企業だけでなく、どなたでもご利用いただける「相談センター」を設置し、労働者派遣法をはじめとする派遣に関するさまざまなご相談に対応しています。2023年度の相談件数は4,518件であり、前年度とほぼ同様の件数となりました(別表参照)。2020年度から始まった新型コロナウイルス蔓延の影響により、電話相談を一定期間Web相談のみの体制にせざるを得なかったため、2021年は2019年の相談件数の半数まで減少しましたが、現在は回復傾向となっています。

別表 労働者派遣事業アドバイザー相談状況
対象 2019年度 2020年度 2021年度 2022年度 2023年度
派遣社員 1,747 1,064 787 1,411 1,511
派遣会社 4,247 2,579 2,305 2,833 2,772
派遣先企業 297 159 98 156 137
その他 743 445 170 121 98
合計 7,034 4,247 3,360 4,521 4,518

最近の相談事例

派遣社員からの相談

【休業手当に関する相談】
派遣社員から「休業手当」に関する相談が多く寄せられます。
特に多いのは、派遣先で急に派遣契約期間が短縮され、自宅待機を命じられた際の賃金の支給に関するものです。
派遣先の都合で派遣契約期間が短縮される場合、まず、派遣先は派遣元に対して、短縮理由を十分に説明し派遣元の合意を得る事が必要です。次に、派遣先は派遣社員に対して、新たな就業機会を提供するため関連会社への斡旋などに努めることが求められます。一方、派遣元は労働契約期間が満了するまでに派遣社員に新たな派遣先を紹介することが基本となりますが、新たな派遣先を紹介できない場合には、労働契約期間が終了するまでの間、派遣元は派遣社員に休業手当を支払う義務があります。このような場合は、派遣元は派遣先に対して、契約期間の短縮に伴う損害賠償を請求することができます。

また、「派遣先の創立記念日」や「特別休暇」「計画年休」等により就業できない場合や、「派遣先の夏季休暇」が派遣社員には知らされていなかった場合等、派遣社員が就業可能にもかかわらず、休日とさせられるケースも見受けられ、その時に有給休暇の取得を強制されたことについての不満や、その場合に休業手当が支払われるかどうかという相談も多く寄せられます。
派遣先の休日の問題は、派遣契約の締結・更新時に派遣先の休日や休暇に関する情報を確実に把握し、派遣契約書、就業条件明示書に就業する日(具体的な曜日または日)を明確に記載すること、また、派遣社員にしっかりと伝えることがトラブルの未然防止につながりますので、後まわしにせずに取り組むことをおすすめします。

なお、休業手当については、賃金の6割が支給されると考えている派遣社員が多く見受けられます。
実際には休業手当は、平均賃金(原則:平均賃金 = 算定事由発生日(賃金締切日がある場合は、直前の締切日)以前3か月間の賃金総額 ÷ その期間の総日数(暦日数)))の6割となります(労基法第26条、労基法第12条)。そのため、派遣社員が考えている金額よりも少なくなることがほとんどであるため、派遣社員からは違法でないかとの問い合わせもあります。この点についても派遣社員に十分にご説明ください。
※なお、就業規則等により6割を超える休業手当、例えば満額支払い等を定めることは問題ありません。
※賃金が日給制、時給制等の場合、労働者が不利にならないよう平均賃金ではなく最低保障額で支払う場合があります。

派遣元からの相談

【期間制限・個人単位の抵触日】
個人(組織)単位の期間制限の抵触日を迎える派遣社員が他の派遣元から移籍してきて、当社から同じ派遣先の同一の組織単位に派遣した場合、抵触日の起算日はリセットされるのかという相談が多く寄せられます。しかし、個人(組織)単位の派遣期間制限では、同一の派遣社員が同一の組織単位で働ける期間は3年間までと定められており、派遣元が変更されてもこれまでの抵触日は引き継がれるため、リセットされません。
なお、派遣元で無期雇用の場合は期間制限の例外となるため、有期雇用から無期雇用に転換することで同一の組織単位での派遣を継続することが可能です。ただし、派遣先が主導して派遣元の変更を行うと、派遣社員の特定を目的とする行為と見なされる恐れがあるため、この場合も注意が必要です。

【期間制限・事業所単位の抵触日】
2024年は期間制限の改正法施行から3年のサイクルに当たる年のため、期間制限に関する相談が多く寄せられます。
その中で、派遣先で行う事業所単位の期間制限の延長手続き(意見聴取)の完了を待たずに、抵触日を超えて派遣契約を締結できるかという相談も見受けられます。
その場合、万が一、派遣先が抵触日の延長を行わなかった場合のリスクを考慮すると、安全策として抵触日の前日までの派遣契約にする方が賢明です。例えば、事業所単位の抵触日が10月1日の場合、抵触日の延長が確定していなければ、実質的に派遣できるのは9月30日までとなります。したがって、まず9月30日までの派遣契約を締結し、意見聴取手続きが完了し、新たな抵触日の通知を確認してから、10月1日以降の派遣契約を結ぶことが適切です。

派遣先からの相談

【直接雇用に関する紹介料の取り扱い】
派遣先が受け入れていた派遣社員を直接雇用することになった場合の紹介手数料の支払いの取扱いについての相談が寄せられます。一般的には、派遣契約書に紛争防止措置として、派遣終了後に派遣先が派遣社員を直接雇用する場合には、紹介手数料を支払う旨を規定しているケースが多いので、自社の派遣契約の記載内容を今一度ご確認ください。なお、派遣元が紹介手数料を請求する場合は、有料職業紹介事業の許可が必要となります。

なお、日本人材派遣協会・会員サイトでは、相談センターに寄せられる相談事例をベースに、会員企業の皆様(特に営業担当の皆様)が知っておくべき内容を1-2分の動画にてご紹介しています。また、派遣法をはじめとした法解説のページ、法改正解説動画も充実しておりますので是非ともご覧ください。
URL https://www.jassa.or.jp/member/
ご不明な点がございましたら、相談センターまでお電話ください。
また、当協会HP「お問い合わせフォーム」からのご相談も賜っております。併せてご利用ください。

一般社団法人日本人材派遣協会 相談センター
9:30~18:00 月~金(祝日、年末、年始を除く)
TEL 03-5744-4125(直)
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